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2017年度新エネルギー展望

『2017年度新エネルギー展望』
Bloomberg New Energy Finance(BNEF)による、世界の電力分野の年度毎長期的経済予測

Executive summary June 2017
[ 出典:https://about.bnef.com/new-energy-outlook/#toc-download ]

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<< 前書き >>

“New Energy Outlook 2017″(NEO 2017)へようこそ。本NEOは電力システムに焦点を当て、12カ国65社を超える国内外の専門家を組み合わせて、2040年までの電力分野を形成する経済的な推進要因と転換点を独自に評価します。

短期的には当社の市場予測は、政策推進力とBNEF独自のプロジェクト・データベースの評価に基づいており、そこでは国や分野別に計画された新築、改築、廃棄への詳細な知識が用意されています。中長期的予測においては、ピークと平均の需要を国ごとに分析することで異なる発電技術を構築するコストを明らかにします。

われわれは、小規模および大規模のバッテリシステムを明示的にモデル化し、需要対応と電気自動車の充電の拡大の様子を注視しています。これらの新しい柔軟性ある視点は、需要と供給のよりダイナミックなバランスを可能にし、種々の風力および太陽光発電が大量に展開され、従来の資産が消失する市場ではとくに重要になります。

研究の目的は、再生可能エネルギーと従来エネルギーの変化する基盤について、これらがどのように将来のエネルギー景観を形成するのか、そして結果として参加者にとって市場でどのような機会とリスクが生じるか注視することです。NEOはコスト最小化のための運動であるため、BNEFのアナリストチームに焦点を当てたトピックである、新技術からの価値を最大限に引き出すために、大幅な市場改革と新しい価格シグナルが必要となります。

顧客は変化する市場へのユニークな見方を注視しており、このBNEFレポートを最大限に活用するのを楽しみにしています。

[ このNEOは、総括・アメリカ・EMEA*・アジア太平洋・風力・太陽光・化石燃料の7巻として出版されます。 * ヨーロッパ、中東及びアフリカ ]

<< 要約 >>

・世界
世界の電力需要は年2%増加し、2040年では現在より58%増となる。だがGDP当たりの電力消費量は27%減少すると予想。

・再生可能エネルギー
2040年までに世界の新設電力設備に対し、10.2兆ドルが投資されると見込む。このうち72%が再生可能エネルギーで、7.4兆ドルになる。ソーラーは2.8兆ドル、風力は3.3兆ドルである。

2040年までに、風力と太陽光が世界の発電設備容量の48%を占め、同発電量の34%を占める。ちなみに現在はそれぞれ12%と5%である。太陽光発電の設備容量は2040年までに14倍、風力発電のそれは4倍に増加する。バッテリーと新技術によって再生可能エネルギーの範囲が拡大して、各国の発電量に占める割合はドイツで74%、米国で38%、中国で55%、インドで49%に達すると予測。

太陽光発電のコストは、2040年までに66%低下する。陸上風力発電については、より効率的なタービンと合理化された運転および保守手順のおかげで、2040年までに47%低下する。

陸上風力発電のコストは急速に低下するが、洋上風力はより早く低下する。開発経験、競合、リスクの低減、大型プロジェクトや大型タービンによるスケールメリットにより、洋上風力のコストは2040年までに71%低下すると予測。

消費者主導のPV(太陽光発電)は電力部門の重要な部分になる。2040年までに、屋上PVはオーストラリアでは総発電量の24%、ブラジルでは20%、ドイツでは15%、日本では12%、米国とインドでは5%を占める。

EV(電気自動車)は電力利用を強化し、グリッドのバランスをとるのに役立つ。欧州と米国では、2040年までにEVがそれぞれ13%と12%の発電量を占める。再生可能エネルギーが生成され、卸売価格が低いときに柔軟にEVを充電することで、システムが間欠的な太陽光や風力に適応するのに役立つ。EVの成長は、2030年までにリチウムイオン電池のコストを73%下げる。

2040年までにエネルギー貯蔵用のリチウムイオン電池が年間200億ドルの市場になると予想しており、量的には現在から10倍の増加となる。PVシステムと並行して、家庭や企業によって設置される小型バッテリーは、2040年までに世界中に設置される貯蔵容量の57%を占める。

[ 図1、2040年時点までの世界の発電種別ミックス ]

・化石燃料
2030年までに風力と太陽光発電は既存の石炭工場を駆逐し始め、いくつかの国では再生可能エネルギーの導入の加速と石炭利用の減少を促す。計画中の新しい石炭発電所のわずか35%しか建設されない。つまり、369GWのプロジェクトが中止され、2040年の世界の熱用石炭需要は2016年に比べて15%も減少する。

世界の石炭火力発電は2026年にピークを迎える。石炭需要の伸びはアジアを中心に増えるが、欧州と米国の急激な減少により相殺される。中国の石炭火力発電は、今後10年間でピークに達する筈だ。

ガス火力発電量は2040年までに16%増加してピークとなり、”ベースロード”石炭の代わりにシステムの安定性を提供するために必要な柔軟な発電源として、更に増加し活動する。ガスが豊富で安価な北米では、とくに短期間でより中心的な役割を果たす。

・アジア太平洋地域
同地域は、世界の他の国々と同じくらい多くの発電への投資を見込んでいる。中国とインドだけで、エネルギー部門にとって4兆ドルの機会がある。2017-40年間に全地域投資に占める割合は、中国は28%、インドは11%となる。風力と太陽光の両方が、総投資額の約3分の1を占める。

中国とインドへの電力供給は、4兆ドルの機会をもたらす。この2国は、2040年までの発電へのすべての投資の、それぞれ28%と15%を占める。アジア太平洋地域は、他の全国々と同じくらい多くの投資を行い、合計で4兆8,000億ドルと見込まれる。このうち、3分の1が風力に、3分の1が太陽に、18%が原子力に、10%が石炭とガスに投資される。

石炭の生産量ピークはアジアで起こる。石炭の生産量は2024年にピークとなり、その後発電設備の廃棄量が新設を上回るために、2028年には発電量ピークを迎える。2020年代半ばまでには、安価な風力とPVが地域全体で新石炭生産設備を駆逐し始めるが、平均的な設備は年に9GWしか削減されない。石炭は、2040年に34%の電力を供給する地域電力供給の基盤であり、他のどの燃料よりも大きなシェアを占めている。

中国では再生可能エネルギーが増大し、風力と太陽光発電が2040年に現在の8倍に増えよう。中国の石炭消費量は2026年にピークを迎えるが、現在よりも20%も高いレベルにある。中国は世界最大の石炭消費国およびCO2排出国であり、その燃料は2040年の発電ミックスの30%を占めている。

インドは今後5年間で40GWを超える石炭の新生産設備を増やすことにより、石炭生産力を大幅に拡張する。その後、石炭の新規建設は遅くなるが、既存のプラントの利用率は増加し、石炭消費量は2020年まで年間約3%増加すると予想される。インドでは、太陽光発電量が2020年代から2030年代にかけて倍増するペースで新設され、2030年から太陽光発電は石炭と併存することになる。

日本と韓国はガスから石炭へ、その後は太陽光へとシフトする。今後10年間に30GW以上の石炭火力発電が委託されているため、両国のガス火力発電量は減少する。日本と韓国は、我々の予測ではかなりの量の新石炭火力発電を設置するOECDの唯一の2国である。日本と韓国の電力セクターのガス需要は、現在の海上ガス需要の半分を占めているため、今後10年間で50%以上減少し、世界のLNG市場に影響を及ぼす可能性がある。

・欧州
欧州の再生可能エネルギーへの投資は、2040年まで平均2.6%増加して、年間平均400億ドルに達する。欧州全体の再生可能エネルギーへの総投資額は、2017-40年間でほぼ1兆ドルとなる。欧州の堅調な発電能力は、可変で柔軟な生産能力に取って代わられ、29%縮小する。

2040年のヨーロッパの電力供給の半分は、様々な再生可能エネルギーからもたらされ、送電網と発電機に挑戦している。変化するグリッドは、56GWのバッテリを含む103GWの新しい柔軟な容量のシステムへの機会を創出する。これらはピーク負荷、付随的サービス、需要の変化または再生可能な供給、周波数制御に役立つ。

欧州のガス火力発電は、今後10年間に石炭と原子力の退場と言う恩恵を受ける。しかし2008年に示された記録レベルに戻ることは決してない。原子力発電量は50%減少し、石炭使用量は2040年までに87%削減される。これにより、2040年の電力セクターのCO2排出量は、2017年に比べ73%減少する。

MENA(中東・北アフリカ)地域における設置容量は、2017年から40年にかけて93%の化石燃料から53%のゼロ炭素に移行する。石油依存度が低くなり、ガス依存度が高くなる。ガスは2040年までに発電量の半分以上を供給する。

・アメリカ大陸
同大陸の再生可能エネルギーへの投資は、平均して年500億ドルで2040年に至るので、総投資額は約1兆5,000億ドルになる。太陽光への投資は風力よりも速く成長し、太陽光は年平均1.5%増加し、風力は0.8%増加する。米国では、石炭プラントが廃止され、より安価な天然ガスと再生可能エネルギーに置き換えられるので、電力部門の石炭消費量は45%減少する。

米国では2023年までに陸上風力と太陽光発電は、新設ガスプラントと競合するようになる。5年後、PVは既存のガス火力発電を駆逐していく。PVは年平均15GW増え、年間投資額は100億ドルで、他のどの技術よりも多くのPVが米国で増設される。小規模PVは2040年までに140GWまで成長するが、予測期間の大部分では経済性には依然問題があり、少数のシステムのみがバッテリとペアになる。

メキシコでは、再生可能エネルギーは2040年までに電力の80%を占めるようになる。ソーラーはガスと水力を追い越して、メキシコの生産能力を支配し、2040年には3倍以上になる。

米国の天然ガスは輸出が加速する中、アメリカ大陸全土で発電ミックスに影響を与える。メキシコへの国境を越えた輸出と、液体天然ガスの輸出が、さらに南に向かう。新しいガスプラントは北米の退役石炭と原子力を置き換え、中南米の一部では比較的低コストのオプションを新たに建設することができる。

・気候変動対策
2030年の米国の電力部門のCO2排出量は、連邦政策が存在しない場合でもクリーン・パワー・プランの目標に非常に近づいており、2005年の水準より30%低くなると予想している。連邦のプランは、2030年までに電力部門のCO2排出量を2005年の水準より32%削減することが予想されており、UNFCCCパリ合意での米国の約束は、2025年までに2005年の水準より26-28%低いという経済目標設定となる。

世界の電力部門のCO2排出量は2026年に14.1Gtでピークに達し、2040年まで1%ずつ減少していく。主に中国の石炭撤退率が速いため、これまでの予想よりも急激に減少することになる。また、インドが太陽光を受け入れ、660GWの新PVを建設するのに405億ドルを投資するため、インドの排出量も急速に低下すると予想している。

世界の電力部門のCO2排出量は10年以内にピークに達するが、排出量の減少率は気候にとって十分なものではない。電力セクターを2℃の軌道上に置くには、3.9TWのCO2排出電力を削減するべく、さらに5.3兆ドルの投資が必要となる。