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日本:再生可能エネルギーによる、より大きなエネルギー安全保障 ~原子力経済後の電力転換

[出典:The Institute for Energy Economics and Financial Analysis(IEEFA) Report
“Japan: Greater Energy Security Through Renewables”
~Electricity Transformation in a Post-Nuclear Economy
http://ieefa.org/wp-content/uploads/2017/03/Japan_-Greater-Energy-Security-Through-Renewables-_March-2017.pdf

March 2017
Tim Buckley, Director of Energy Finance Studies, Australasia and
Simon Nicholas, Energy Finance Analyst ]

<< Executive Summary >>

 このレポートは、日本の電力システムが直面しているリスクと課題が、再生可能エネルギーへの投資を通じてどのように改善され、かつエネルギー安全保障を構築し、輸入化石燃料と原子力発電への長期的依存性を減少させるかを概説している。

 評価の基本は、エネルギー効率の上昇が過去6年間の日本の電力需要を押し下げており、今後もそうすることができるということである。この重要な要因の肯定的な影響は、しばしば控えめに及ぼされる。

 日本のエネルギー効率は、再生可能エネルギーの拡大を支えている。日本の電力部門に関する我々のモデルでは、電気自動車の可能性が高いにもかかわらず、需要の落ち込みが、再生可能エネルギーへの投資の理想的なシナリオを作り出すことを示している。

 東京電力の福島原発事故の6年後、日本はエネルギー政策の転換期に入っている。その課題は、経済成長の低迷、人口の減少、電力需要の減少(2010年のピーク時に比べて11.5%減)などである。

 2011年以降、原子力発電なるベースロードを化石燃料ベースロードに置き換えることを奨励する政策はコスト高であることが判明し、結果として、ますます利用可能なコストを急速に下げられる技術的利益見通しのある再生可能エネルギーの開発機会が失われた。

 日本のエネルギー転換について問われるのは、経済を超越する問題である。確かに日本のエネルギー安全保障は依然としてリスクがある。福島事故以前には、原子力が原子力発電の長期的な生産に重要な役割を果たすことを確保するために、日本は十分な核燃料を持っていた。福島の原子炉の閉鎖以来、この国は化石燃料の輸入に深く頼ることとなった。これは、貿易収支の30年分の貿易黒字から、2014年には1,160億ドルに達する赤字への逆転に寄与することになる。

 日本は、パリの気候変動に関する合意を約束し、発電ミクスにおける再生可能エネルギーのシェアを増加させることにより、これからの長い道のりを辿ることができる。それには強い政策指導力が必須となる。

== 主な所見 ==
1. エネルギー生産性の向上は、2010年の1,140TWhから2030年には868TWhへと電力需要を減少させる。
 日本の人口減少が経済成長を制限し、世界をリードするエネルギー効率がさらに高いエネルギー生産性向上を推進しているため、過去6年間と同じように、電力需要は少なくとも2030年まで減少すると見られる。2010年度の発電量は1,140TWhであったが、2015年度には11.5%減少して1,009TWhになった。IEEFAは毎年2%の生産性向上を見込み、2030年までに発電量は868TWhまで減少するとみる。

2. 日本が電力業界を再構築する中で、2030年までに太陽光発電は日本の発電ミクスの12%を占めることができる。
 総発電量が減少するにつれて、太陽光発電は現在の4%から、2030年には日本の電力ミクスの12%を占める可能性がある。日本は2013年から2015年の間に、太陽光発電の世界第2位の導入国となった。しかし、この拡張を支持する寛大な援助関税が終了すると、太陽光発電の成長を永続させるためには、日本政府の新たな政策支援が必要となるだろう。
 最近の大規模太陽光の逆オークションへの動きは、現在世界中で達成されているような太陽光発電コストの大幅な削減を、日本でも実現できることを示している。もし導入されれば、屋上のソーラーと継続的な市場改革に焦点を当てる政策は日本の再生可能エネルギーの範囲を広げ、一方、大きな水力発電容量と地域間のグリッド接続性の向上は太陽光発電を増加した地域のグリッドに統合するのに役立つ。

3. 日本の洋上風力発電は膨大な可能性を秘めており、ベースロード電力需要に貢献する可能性がある。
 限られた適切な土地のための日本の長い承認プロセスのために陸上風力の開発は遅いが、洋上風力開発には重要かつ見過ごされた機会が存在する。実際に、洋上風力発電は日本の長期エネルギー計画で大きく逃した巨大な可能性を秘めている。日本には世界で最も優れた製造業がある。これはおそらく最高である。いくつかの日本企業はこのフロントで行動し始めて居る。三菱重工業は現在、洋上風力技術の研究開発を行っており、MHI Vestas Offshore Windとのジョイントベンチャーを通じて、オフショアタービンを供給している。
 中国と米国は、この主要で未使用の資源を積極的に活用しようとしている。土地制約問題がないと言うオフショア風力固有の特徴は、45%から50%の稼働率と同様に有利に機能し、ベースロード電力に寄与できることを示している。IEEFAは、日本の洋上風力は2030年度までに10GW電力容量に達すると見なしている。この時期にヨーロッパと中国は、それぞれ100GWのオフショア生産能力に達することができるだろう。

4. 日本は、2030年までに電力需要の35%を再生可能エネルギーで満たす立場にある。
 太陽光発電と洋上風力発電容量を増やし、生産工場の電力需要を減少させる強力な推進政策を考慮すれば、日本の総再生可能エネルギーシェアは2030年には発電量の35%に倍増するだろう。IEEFAのモデルには水力とバイオマスが含まれ、COP21の約束を果たす日本政府に依存している。
 日本が国の再生可能エネルギープログラムを支援するために資本市場を活用できるよう変化を起こすには、再生可能エネルギープロジェクトへの規制やグリッド障壁が大幅に低下することが必要となる。政府が再生可能エネルギーとエネルギー効率のために70億ユーロのグリーンボンド・イニシアチブを開始したフランスでは、同様の進歩が最近行われた。これが日本で起こった場合、再生可能エネルギー総量が2010年度末に100GW、2030年に159GWに達し、2010年の発電量のほぼ3倍に達するとIEEFAは見積もっている。

5. 福島原発事故後の日本の原子力産業は、おそらく回復しないだろう。
 IEEFAは、日本の40GWのオフライン原子力発電容量のうち、2030年までに稼動開始するのは4分の1に過ぎないと見ている。それまでの原子力発電の総発電量はわずか8%であり、政府目標の20-22%には到底達さない。日本は発電ミクスの多様化とエネルギー安全保障の向上のために原子力発電を再開しようとしているが、経済的に苦労している事業者は、原子炉が寿命に達する前に新たな安全基準を満たさねばならないと言う逆風に晒される。

6. 日本は、新しい石炭火力発電所の建設計画を大幅に縮小する可能性が高い。
 日本が提案している45の新しい石炭火力発電所のほとんどは計画段階にあり、日本の電力需要減少のために多くは建設段階に達しないであろう。提案された石炭火力発電所群の拡張が、実際に全容量を追加するか、単に既存の熱容量を置き換えるかどうかはとにかく不明であり、このプロジェクトの勢いは消えつつある。日本の大手電力会社(EPCO)は最近、石炭発電計画の見直しを開始した。関西電力は、電力需要の減少を受けて2017年1月、石炭火力発電から石炭火力発電に切り替えるプログラムを停止すると発表した。

 2030年に正味熱容量が拡大しないと仮定しても、電力需要の減少と再生可能容量の増加は、そのような能力の稼働率を低下させるであろう。IEEFAは、2030年までに日本の火力発電量が2015年比で40%減少すると見ている。

 同じような傾向は中国とインドでもしばしば見られ、熱需要と再生可能エネルギーの両方を同時に導入することで、これらの国の電気需要が増えつつあるにもかかわらず、2016年に石炭火力発電所の稼働率がそれぞれ47%と56%に低下するとの見通しを立てている。

 IEEFAはオフラインの原子炉の4分の1だけが復旧すると予想している。万一、日本の原子力再稼働がこのレベルを超えた場合、その結果は熱発電利用率をさらに下げる圧力になる。

 電力転換が進むに伴い、スマートで国家的に接続されたグリッドへの投資に向けた世界的な動向から、再生可能エネルギーとエネルギー効率が益々頼りになることを日本は学ぶことができる。
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[管理者脚注:(IEEFAのホームページから)
 エネルギー経済金融研究所(IEEFA)は、エネルギーと環境に関連する財務および経済問題に関する調査と分析を行っている。この研究所の使命は、多様で持続可能で収益性の高いエネルギー経済への移行を加速することである。

IEEFAは、次の慈善団体からの資金援助を受けている。
the Rockefeller Family Fund, Energy Foundation, Mertz-Gilmore Foundation, Moxie Foundation, William and Flora Hewlett Foundation, Rockefeller Brothers Fund, Growald Family Fund, Flora Family Fund, and Wallace Global Fund,]
                                     以上