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全固体電池開発の現状

 地球温暖化対策の観点から、エネルギー源として化石燃料を使うのは 避けるべきであるとの見解は世界的に認識されつつある。

 自動車業界では電気自動車が注目され、リチウムイオン電池を燃料源とする動きが活発化している。ガソリン車に比べると、価格や性能面 (走行距離や充電時間)において未だ不十分な点があるが、何と言っても 環境に優しい乗り物としては画期的である。

 自動車用リチウムイオン電池は、最新の”日産リーフ”車の場合、正極 材料としてニッケル、マンガン、コバルトの三元系の層状構造材*¹ を、 負極材料は不明であるが特殊カーボンを、そして電解液は有機溶媒を使用 していると推定される。*²

*1:日産自動車株式会社HP
https://www.nissan-global.com/JP/TECHNOLOGY/OVERVIEW/li_ion_ev.html
*2:パナソニック社HP
https://industrial.panasonic.com/cdbs/www-data/pdf/ACA4000/ACA4000PJ3.pdf

 現状のリチウムイオン電池は、有機溶媒を有するのが必須条件であって、そのため安全性や性能限界、あるいは電池構造の肥大化や過重化といった 問題を抱えている。

 この問題を解決するには、有機溶媒を使わない、”全固体電池”を開発する必要があるとされる。すなわち、電池構造が全てセラミック系となる必要があるとの見解である。*³

*3:「全固体電池最前線~究極の蓄電デバイスを求める東工大研究者たちの道のり」
    DG Lab Haus 2019年2月20日
    https://media.dglab.com/2019/02/19-battery-01/

全固体電池研究の流れ

 全固体電池を開発するには、大きな課題が2つある。*⁴
①室温で、リチウムイオン電池の電解液並みの高いイオン伝導率を示す固体電解質を開発すること。
②電極と固体電解質との界面の抵抗を低減すること。

*4:「実用化に近い次世代蓄電池”全固体電池”」
    サイテック・コミュニケーションズ 山田久美
    化学と工業│Vol.70-9 September 2017
    http://m-dimension.tohoku.ac.jp/wp-content/uploads/2018/03/
    fe860425ac03aa555078da54ff2e910c.pdf

 ①の課題については、リチウムイオン電池に使われている電解液のイオン伝導率は、10-2S/cm(S;ジーメンス)程度で、なおかつ、これはリチウムイオンと電池動作に関与しない陰イオンを合算した値なのだ。
 固体電解質ならば、移動するのはリチウムイオンのみなので、リチウムイオン電池と同等の出力性能を実現するには、その電解液よりも低い 10-3S/cmのイオン伝導率を示す固体電解質を開発できればよいことになる。

 1980 年代から1990 年代には、目標とするイオン伝導率を示す硫化物と 酸化物が発見され始めた。これは、当時、松下電器産業社で、約30年間にわたり固体電解質の研究開発に取り組んできた現・物質材料研究機構エネルギー環境材料研究拠点副拠点長・高田和典氏や,1992 年から高田氏と共同研究を進めてきた大阪府立大学大学院工学研究科の辰巳砂昌弘教授らの功績によるところが 大きい。

 辰巳砂教授は、”メカノケミストリー”*⁵ に基づく製造方法により、10-3S/cm
というイオン伝導率を示すガラス系硫化物をつくっている。

*5;固体物質に摩砕、摩擦延伸、圧縮などの機械的エネルギーを加えることによって引きおこされる相転移や構造、反応性、吸着性、触媒活性などの変化をいう。その1 つの方法として,辰巳砂教授はボールミル処理を採用した。

 一方、結晶系硫化物でイオン伝導率の高い物質を探索していたのが,無機結晶の “超イオン伝導体”⁶ を30年以上にわたり研究してきた東京工業大学物質理工学院の 菅野了次教授である。菅野教授は”固相反応法”によって、様々な組成の結晶 づくりを試す中、2000年に、10-3S/cmのイオン伝導率を示す結晶系硫化物 “thio-LISICON(チオリシコン)”(資料4の図4参照)を見い出した。さらに2011年には、電解液に匹敵する1.2×10-2S/cmのイオン伝導率をもつ
“Li 10 GeP 2 S 12 “(以下、LGPS)を開発した。

*6;見かけは固体であるにもかかわらず,その中をイオンが高速で移動し,溶融塩や電解質溶液と同程度のイオン伝導率を示す物質の総称。

 しかし、これらの硫化物を使って全固体電池をつくってみたところ、どれも十分な出力性能が得られなかった。その要因は,解決すべき課題②に挙げたように、電極と固体電解質との界面で高い抵抗が発生していたからだ。全固体電池で高い出力性能を実現するには、固体電解質内だけでなく、電極と固体電解質との界面でも高いイオン伝導率を実現しなければならないのだ。

 そこで、辰巳砂教授はガラス系硫化物をベースにした研究で、電極に固体電解質の粒子を添加し加圧焼結することにより、固体電解質を緻密化する方法や、電極活物質粒子の表面に固体電解質をコーティングする方法などを編み出した。
 それに対して、高田氏は、正極と固体電解質の間に、硫化物よりもリチウムイオンを束縛する力が強いチタン酸リチウムの薄膜を”緩衝層”として挿入する方法を考え出した。その結果、全固体電池の出力密度は2桁も向上し、既存のリチウムイオン電池を上回った。

リチウムイオン電池の3倍以上の出力性能を実現

 2016年3月に世界中が注目する大きな進展があった。NEDO の助成事業として全固体電池の研究開発を進めていた菅野教授とトヨタ自動車の加藤祐樹氏の研究グループが、従来の2倍という世界最高のリチウムイオン伝導率を示す超イオン伝導体を発見し、さらにそれを使って全固体電池を開発したところ、リチウム
イオン電池の3倍以上の出力密度が得られたと発表した。この発表を機に、日欧米を中心に世界各国で全固体電池の研究開発競争が激化している。

 この2種類の超イオン伝導体を、J-PARC にある材料構造解析装置iMATERIAで
調べた結果が、資料*4の図5に示されているので参照されたい。イオンの経路が
3次元に広がっているのが明示されている。その経路をリチウムイオンがびっしりと埋め尽くしているので、高いイオン伝導率を示すのだ。

 ここで菅野氏と加藤氏が発見した2種類はいずれも結晶系硫化物で、
“Li 9.54 Si 1.74 P 1.44 S 11.7 Cl 0.3″(LSPSCl)と”Li 9.6 P 3 S 12”
(LPS)だ。前者は、2011 年に菅野教授が開発したLGPS に対して、高価なゲルマニウムに代わる元素を探索する中で見つけたもので、さらに微量の塩素を加えることで、27℃で、2.5×10-2S・cm-1という極めて高いイオン伝導率を示した。一方、後者は,リチウム金属を負極に使っても安定に作動する電解質を探索していた時に見いだした超イオン伝導体で、広い電位窓*⁷をもつのが特徴だ。

*7; 電極反応において、溶媒や電解質の分解などの影響を受けずに安定して電位を走査できる範囲のこと。

 そこで、菅野教授らはこれらの超イオン伝導体を固体電解質に用いて全固体電池を作製した。すると、リチウムイオン電池 よりも室温で3倍以上の出力密度をもつことや、-30℃から100℃までの広い温度範囲で優れた充放電特性をもつことが確認できた。また、室温や高温で1000サイクルに及ぶ充放電を行っても性能の劣化がなく、十分な耐久性があることも分かった(資料*4の図6参照)。

更なる進展を

 とはいえ、硫化物固体電解質には、水蒸気を含んだ空気に触れると有毒の硫化水素が発生することがあるため、乾燥した空気中で扱わなければならないという問題がある。(資料*4末尾箇所から引用)

 そこで、現在、JSTの”戦略的創造研究推進事業先端的低炭素化技術開発(ALCA)”における”特別重点技術領域次世代蓄電池(ALCA-SPRING)”の全固体電池チームでは、辰巳砂教授をチームリーダーに、高田氏をサブチームリーダーに据え、硫化物型全固体電池とともに、酸化物型全固体電池の研究開発も進めている。

 酸化物固体電解質の課題は,電極内および電極との界面で高いイオン伝導率を
示す物質が見つかっていないことだ。とくに酸化物は硫化物とは異なり硬いため、電極との界面で十分な接触面積を取れず、界面での抵抗が上がってしまう。
「しかし、酸化物で成形性に優れた固体電解質が実現できれば、他の次世代蓄電池も含めて、究極の蓄電池が完成することになる」と辰巳砂教授は語る。
全固体電池の開発は日進月歩である。1日も早い実用化に期待したい。

 そうした中、鈴木氏は今(2019年2月現在)どのような課題に取り組み、研究を進めているのか?(資料*3末尾箇所から引用)
・ひとつは、全固体電池の体積が大きく膨張したり収縮したりする課題を解決すること。
・もうひとつは、AIを活用した、酸化物系リチウムイオン導電体の探索法の開発。
 つまり、全固体電池に使って高い効果を上げる物質の探索だという。いわゆるMI(マテリアルズ・インフォマティクス:機械学習を応用した材料探索)だ。「酸化物の全固体電池に役立つ材料を機械学習で見つけたいと思っている」

                            以上

ネクスト・クラフトヴェルケ社は、新しいエネルギーの世界を形作る ー有益で、デジタル、持続可能なー

[出典:ネクスト・クラフトヴェルケ社HP > ABOUT > Our company > Download > Company
https://www.next-kraftwerke.com/wp-content/uploads/company-brochure-vpp-next-kraftwerke.pdf]

     — どのような企業か —

   エネルギー変換用ヴァーチャル発電所(VPP)
 2050年には、ドイツで生産される5kWのエネルギーのうち、最低4kWが再生可能エネルギー源、理想的にはすべてのkWは持続可能な形で生産されることになる。2013年、再生可能エネルギーに基づく新発電所の数は、従来方式の新発電所の数よりも多くなっている。分散型の小規模発電所へのこの巨大なグローバルな変革は、大規模な発電所を時代遅れにするであろう。
 課題:信頼性の高いエネルギー供給を保証するために、これらの新しい分散型発電機と消費者をインテリジェントに調整して制御すること。
 これが当社のVPPが活躍する場所なのだ。現在、当社のシステムは、4,200以上の電力生産および消費ユニットを管理している。これには、バイオガス、風力、太陽光発電などがある。
 総容量は2,800MW以上で、電力網のバランスの変動を助けるだけではない。当社の24/7電力取引フロアを使用して、様々な欧州電力取引所(EPEX Spot あるいはEEXなど)の電力を交換し、生産者と消費者双方にとって最適な価格を見つける手助けをしている。
 再生可能エネルギー源は、生態学的にも経済的にも適切な選択肢であることを、我々は証明している。すべてのVPP参加者とともに、我々は100%再生可能エネルギー源からの信頼できる電力生産で、将来のエネルギー景観を形成している。
[ H・セミッシュおよびJ・シュヴィルは、ネクスト・クラフトヴェルケ社創立者であり役員である。 ]

  図1-ネクスト・クラフトヴェルケ社の業容

   NEXT POOLの仕組み
 気象に依存するエネルギー源に基づくエネルギー供給は、変動のバランスを確実に取る必要がある。これはまさに我々のVPPであるNEXT POOLが行うように設計されている。それは電力生産者と消費者をネットワーク化し、制御する。
 しかし、これはどのように機能するか? ソーラーパークのための日照の少ない曇った日を想像すると、我々の集約されたバイオガスプラントが発電に参加して生産を増やすのだ。また、期待していたよりも風が強い日を想像すると、我々のネットワークの消費者はより安い価格で恩恵を受け、より多くの電力を消費できるのだ。グリッド周波数が低すぎて不安定になると、ネットワーク化されたアセット(資産)グループが起動し、数秒以内に電力が供給される。

  図2-電力供給ネットワーク

   Next Poolにおけるアセットおよびクライアント
> 再生可能エネルギーアセット    > ガス・コージェネ*
> 公共事業 > 100.000 kWh以上の電力消費者
> 発電セット             > グリッド・オペレーター
> 蓄電機
* 「コージェネレーションシステム(CHP)」とは、熱源より電力と熱を生産し供給するシステムの総称であり、国内では「コージェネ」あるいは「熱電併給」、海外では、”Combined Heat & Power”あるいは”Cogeneration”等と呼ばれる。

     — NEXT POOLが提供するもの —

   参加者の収入を増やす – 誰にとっても安定したグリッド
 電力は必ずしも同じ価格ではない。電力取引所では、電力の価格が毎日96回以上変化する。電力生産者と消費者は、VPPのお蔭で価格の変動から利益を得ることができる。NEXT POOLでネットワーク化された集約ユニットとしてプールされた資源は、様々な電力市場に参加するのに十分な大きさなのだ。しかし、それは実際にどのように機能するか?
 ここに例がある。:バイオガスプラントの所有者は、電力取引所の現在の価格に従って生産を調整する。:価格が高いときは生産が上がり、価格が低いときは下がる。これは経済的な意味を持つが、電力システム内の電力生産者の役割も強化する。
 柔軟に消費を調整できる大規模な電力消費者は、電力市場の変動から利益を得ることができる。:電力市場価格が低いときは消費を増やし、価格が高いときは消費を減らす。
 さらに、管理された準備金市場に参加することにより、収益の増加の機会が得られる。:電力生産者と消費者は、VPPを介してグリッド周波数の変動を平準化する柔軟性を提供することができる。これらのユニットは、太陽光や風力などの再生可能エネルギー源の変動性供給をバランスさせることによって、エネルギー移行を積極的に支援する。
 力あるトレーダーと、我がVPPにおける特別に開発されたアルゴリズムのおかげで、我々は常に最適なパフォーマンスのためにどのアセットを使用できるかを知っている。この情報は、VPPのコントロールシステムを使用して、アセットに自動的に送信されるようになっている。
[VPPに参加している4,257人中の1人:G・クラーセン、生産マネージャー、KBB バイオガス有限会社およびクラフトヴェルケ社, キルヒリンテルン]

     — 働き方 —

   多彩な専門家が一つ屋根の下に
 ネクスト・クラフトヴェルケ社本部には、ネットワーク化されたアセットのスマートな提供に必要なすべての部署がある。:IT、制御および通信システム、電力取引フロア、顧客関係、および販売。これらのプロセスは、VPPを継ぎ目無く実行する上で不可欠だが、この完全なサービスアプローチは、多くの電力生産者、消費者、およびユーティリティ会社がネクスト・クラフトヴェルケ社と長年協力してきた理由の1つでもある。
 我々と連絡を取ったときに、誰も匿名のホットラインに話すことはしない。ネクスト・クラフトヴェルケ社では、常に専用の連絡先に繋がるようになっている。
 前述の外部サービスパートナーにより、当社は顧客にできるだけ近づき、間接費を低く保っている。これは、クライアントにとってより多くの収益を意味する。たとえば、市場アクセス、取引、またはバランシング料金を徴収する外部の電力取引業者には依存していない。
 社内取引フロアでは、顧客に幅広いサービスを提供することができる。:EPEXスポットやコントロールリザーブ市場、その他の欧州の電力市場での開場前および日間の市場への直接アクセスを提供している。毎日、当社の優れて有能なトレーダーは、顧客にとって最良の結果となることを目指している。
 さらに我々は、公益企業、エネルギープロバイダー、およびバランシンググループマネージャーの仕事を支援する。VPPの4,200以上のアセットの供給および消費生データは、詳細な予測の基礎を形成する。さらに、気象アナリストの気象データも継続的に更新され、当社の予測を補完している。
[ネクスト・クラフトヴェルケ社の取引チームは、ヨーロッパの様々な電力取引所で24/7取引を積極的に行っている。]

   生産品とサービス
> 市場アクセス   > 電力取引        >バランシング・グループ管理

> 制御予備     > ポートフォリオ管理   > 需要対応

> 柔軟な電力料金

   社内で設計され、運営されている
 VPPの可能な限り最高の制御を維持するために、我々はすべての作業プロセスを社内で処理する。我々によって開発された主要技術コンポーネントに加えて、VPPの運営はネクスト・クラフトヴェルケ社によって完全に管理されている。

     — 設備の機能 —

   数千のユニット – 非常に安全なシステムにデジタル接続
 2つまたは3つの大規模従来型発電所の能力に合わせて数千の小規模ユニットを集計する時、そこには多くの技術が関与している。産業4.0、デジタル化、クラウドコンピューティング等の流行語があるが、結局のところ我々のアプローチは基本的なコンセプトに行き着く。:経済的に実行可能でありながらグリッドに合理的なサービスを提供し、電力生産と消費を効率的に制御するために膨大な量のデータを整理し分析する。
 VPPの中心には、当社のシステムエンジニアによって完全に維持管理されている制御システムがある。この制御システムは、M2M通信を介してすべてのアセットと自動的にデータを交換する。制御システム、グリッドオペレータ、およびアセット間の継続的なデータ交換は高度に暗号化されている。余裕あるサーバー構造により、VPPは停止されないことが保証されている。
 当社の制御システムにより、VPPにおいてどのくらいの容量が利用可能か、およびコントロールリザーブ(余剰制御)市場にどれだけの柔軟性を提供できるかが常に分かるようになっている。さらに、この制御システムにより、
EPEX SPOTの日中市場からの価格シグナルに応じて、15分ごとに柔軟な電力生産およびアセットの消費を調整することができる。
 アセットを制御システムに接続するために、NEXT BOXを使う。一度インストールされると、すべての監視データを制御システムに送信し、アセットに価格最適化、したがって収益最適化のスケジュールを実装する。

  図3-NEXT_BOXの写真

VPPへのM2M接続:Next Boxは分散されたアセットを制御システムに接続する。

     — 業績 —

<< 業容 >>           << 賞 >>
・VPPの全容量:2,800 MW以上   ・2017年インターソーラー賞受賞 他多数
・接続アセット数:4,200以上
・取引電力量(2016):10.2 TWh
・設立:2009年
・支社数:11
・従業員数:135名
・売り上げ(2015):273百万ユーロ

  図4_設立時のVPP

   ケルンから世界へ
 2009年、我々はケルンのエーレンフェルド地区でVPPのビジョンを開始した。現在、ヨーロッパ最大のVPPの1つを、2つの原子力発電所に相当する総容量で運営している。我々は、生態学的かつ経済的に実行可能な電力生産を実現させると言う世界的なエネルギー転換の目標を追求しつつ、成長を続けている。

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世界的なエネルギー転換の見通しと再生可能エネルギーの役割

[出典:IRENA(International Renewable Energy Agency)ホームページに掲載されている報告書「エネルギー転換の視点~低炭素エネルギーシステムへの投資ニーズ」
http://www.irena.org/DocumentDownloads/Publications/Perspectives_for_the_Energy_Transition_2017.pdf
の第3章のみを取り上げて、当サイト責任者が要約した。]

[注]なお、報告書はIRA(International Energy Agency)とIRENAの共同作成によるものであるが、本出典はIRENA協会が独自に作成したものである。報告書全体の要約は8月の投稿に掲載している。

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*方法論
 シナリオはIRENAのREmap(Renewable Energy Roadmap=再エネ化事例)ツールに基づいて開発されている。再エネ化事例アプローチは、すべてのG20諸国にとって、セクターとエネルギー・キャリアーによるエネルギー供給と需要を評価する、国レベルでのエネルギーシステム開発の技術経済評価法である。

1、基準事例と再エネ化事例の定義
 この分析は、各国のエネルギー部門の現在および計画された政策と市場の期待される発展に基づいた、最も可能性の高い基準事例から始まる。IRENAは、2015年から2050年までの、各国のエネルギー計画と目標について、G20諸国からのデータを収集している。
 各国は現在の再生可能エネルギー容量を増やし、エネルギーシステムのエネルギー効率を向上させることを目標としているため、重要な再生可能エネルギーの導入とエネルギー効率の改善は、既に基準事例に含まれている。次いで、この分析ではエネルギー移行の基準事例を超えている、低炭素技術の進路を検証する。これは再エネ化事例と喚ばれる。
 再エネ化事例でカバーされる技術は:
・再生可能エネルギー技術と、化学物質とポリマーの生産のための原料(この章の後半では”RE”と呼ばれる)。
・エネルギー効率措置(“EE”) と、効率を向上させる広範囲の電化(ELEC)。
・工業用炭素捕集と貯蔵 (“CCS”)。
・リサイクルなど材料効率技術 (“OHERS”)。
 再エネ化事例は、地球温暖化を66%の確率で、工業化前レベルより高くても2℃未満に制限する、パリ協定の目標に沿った脱炭素化エネルギーシステムであるエネルギー移行を探究している。それには、エネルギーCO2排出量は、2015年の33Gtから2050年には10Gt未満に減少する必要があり、2060年までにゼロに低下してそのレベルに留まる必要がある(排出量を1.5℃に制限するには、ゼロ以下に下げる必要あり)。

2,CO2排出削減目標と行程
1)背景
 2020年以降の地球温暖化対策の国際的枠組みを定めたパリ協定では、地球温暖化対策にすべての国が参加し,世界の平均気温の上昇を産業革命前の 2℃未満(努力目標 1.5℃)に抑え,21世紀後半には温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目標とすることになった。
 一方では2050年までに世界のGDPは3倍になると予測されており、このままでは基準事例に示されるようにCO2排出量は増大してしまうので、エネルギーのCO2排出量は60%以上減少させなければならないと言う厳しい状況になる。

2)目標
 エネルギー効率措置と再生可能エネルギーは、地球規模のエネルギーシステムを脱炭素化するために必要な排出削減量のシェアを提供する。
○2030年まで
・エネルギーと材料の効率改善は、2030年までに排出量を約4Gt削減できるが、これは必要とされる排出削減量の約30%である。
・電化は別の1.5Gt、すなわち必要とされるものの10%を削減する。
・G20諸国のボトムアップ分析に基づいて特定された再生可能エネルギーオプションは、さらに10Gtの排出を削減することができる。
 これらの措置の結果、2030年の排出量は2030年に25.5Gtに減少する。
   (残りの化石燃料の燃焼は、年間約22GtのCO2を排出する。)
○2050年に向けて
 上記レベルは、2030年に世界を2℃の経路に置くのには十分だが、しかし世界をこの経路に維持するには、2030年から2050年の間にさらに努力を強化する必要がある。
 すなわち、2050年までにエネルギー関連のCO2排出量が10Gt以下になることが求められ、2015年の水準より70%低く、基準事例よりも31Gtも少なくしなければならない。
・これらの削減量の約半分は、再生可能エネルギー技術によって達成される。
・エネルギー効率の向上と電化は、他の半分の大半を占めるであろう。
・削減の残りの10%は、とくにCCS、材料効率改善、構造変化など、業界における追加的な措置に由来する。

3)行程
○再エネ化事例に基づく
 削減目標を達成するには、図1に示すように再生可能エネルギーが2050年の総排出量削減の半分を担い、45%はエネルギー効率の向上と電化による。

  図1:基準事例と再エネ化事例における技術別CO2削減効果,2015-2050

○総エネルギー需要の推移
 図1の行程を総エネルギー需要の観点から分析すると、図2のようになる。

  図2:エネルギーキャリアによる2015-2050年間の全最終エネルギー消費

[注]建物、産業、輸送だけが含まれる。化学物質およびポリマーの製造用燃料の非エネルギー使用は除外される。

 図2は、2015年から2050年までの総エネルギー需要の推移を基準事例と再エネ化事例の両方で示している。再エネ化事例では、全最終エネルギー消費(TFEC=total final energy consumption)期間中の需要は平坦である。
・TFECにおける化石燃料のシェアは、70%から30%に低下している。
・再生可能エネルギーの直接使用は、10%から35%に増加する。とりわけ最終的な全エネルギー消費における最終バイオエネルギー利用の割合は、2050年に約13%から20%(約50EJから80EJ)に上昇する。これは、7%の輸送用バイオ燃料と14%の固体および気体状のバイオ燃料に分けて、発電および加熱することができる。
・太陽熱温水器の使用は、産業および建物用に約35EJまで増加する。
・石油のシェアは大幅に低下し、輸送はバイオ燃料と電気に依存する。しかし、今日の水準の半分の量の油が、道路以外の旅客輸送および貨物の需要を満たすために使用されることになる。

○化石燃料の扱い
 基準事例と比較すると、最終エネルギー期限(2050年)では、石油とその製品に大きな変化がある。
・基準事例では、石油使用量は123EJから170EJまで増加するのに対し、再エネ化事例では石油需要は55EJまで低下する。
・現在のレベルと比較すると、石炭の使用は半分以上であり、産業部門のいくつかの用途でのみ使用されている。
・再生可能エネルギーが利用されていない産業および建物への暖房を供給するために、ガスはこの移行において重要な燃料として残っている。

3、CO2排出源と削減法
 最大のCO2排出部門は、発電と産業である。 これらは、今日のエネルギー関連のCO2排出量の約65%を占めている。残りの35%は、輸送、建物および地域暖房に由来する。建物のシェアは低いが、電気使用に関連する間接的な排出が含まれている場合にはこれが増加する。
1)用途別排出部門
○発電
 発電はCO2排出量の最大の部門別シェアを占めるので、この部門を2050年までに脱炭素化することが最優先事項となる。再生可能エネルギーの導入に関しては、発電部門は最終用途の部門よりも進んでいるが、石炭の使用を削減する努力は、その道筋を続けるために強化されなければならない。これは、アジアの急速な成長を遂げる経済における石炭の発電への依存度が高まる中でとくに重要である。とりわけ中国、インド、インドネシアなどの発電部門でCCSのない石炭を段階的に廃止することが最優先事項であるが、2050年まで再エネ化事例のもとではCCSの導入は予見されていない。
・CO2削減には、再生可能エネルギーの大幅増が必須に
 再生可能エネルギーの割合は2030年の基準事例では31%に達し、2015年の23%から増加するであろう。再エネ化事例のもとでは再生可能エネルギーの割合は2050年に82%に達し、基準事例の2倍以上として、今日の水準より約4倍も高くしなければならない。そのため移行には、現在の努力の大規模化が必要となる。
 今日、発電部門における再生可能エネルギーの割合は、年間約0.7%ポイント増加している。脱炭素化目標を達成するには、再生可能エネルギーの割合が全エネルギー創出量の59%に達するように、この比率を2030年までに年間2.4%ポイントと、3倍以上にする必要がある。その増加程度は、2050年まで少なくとも年率1%の割合で継続しなければならない。(図3)

図3,: 2015-2050年における基準事例と再エネ化事例の、技術による発電能力と総発電量

[注目点]電力部門では、再生可能エネルギーが最高の比率を占める。2050年までの再エネ化事例では、風力と太陽光が最大の比率を占めながら再生可能エネルギーの多様な組み合わせが、電力の80%以上を供給することになろう。発電における石炭と石油は排除されよう。
—————————-
・再生可能エネルギーの中でも太陽光と風力発電が鍵となる
 2015年末の総発電容量は約6,200GWであった(図3)。基準事例では総発電量は年に180GW増加し、2050年には12,400GWに達する。最大の追加は、太陽光発電と陸上および洋上風力発電の電力であり、全体の70〜80%を占める。導入された総石炭発電容量は、2050年までの期間全体で今日と同じである。比較すると、ガス発電容量は1,500GWから2,900GWに1,400GW増加し、2050年までに総発電容量の最大シェアを占める。
 再エネ化事例の場合、基準事例よりも再生可能電力容量がずっと多く追加される。風力発電量は4,800GWに達し、太陽光発電容量は6,000GWに昇る。
・その他の再生可能エネルギーの寄与
 バイオマス、集光型太陽光発電(CSP)、水力発電などの一連の再生可能エネルギーもまた、柔軟な発電容量を提供する。これらの変更により、再エネ化事例における総発電容量は20,000GWを超え、現在の3倍に達する。
・化石燃料と原子力の扱い
 石油に基づく容量はゼロにまで低下しており、総導入原子力容量は今日と同じままである。天然ガスは柔軟な発電容量を提供するので、2050年までに世界的に約5,000GWのバックアップ容量が補充される。

○産業
 産業は二番目に大きなCO2排出部門で、全世界の排出量の1/3を占める。業界全体が再エネ化事例分析の排出削減量の35%を占める。部門内では、化学物質、石油化学製品、鉄鋼が最大のエネルギー消費者である。しかし、食品や繊維(「他の産業」に含まれる)などのエネルギー集約型部門も、産業用CO2排出量の削減に重要な役割を果たすであろう。
・セメント部門
 セメント製造は、最大のCO2排出産業であると言う点で独特である。セメントを作るには、焼成と呼ばれるプロセスで石灰岩が分解され、大量のCO2が生成される。その結果、業界は全世界のCO2排出量の8%を占めている。これは、CCSが役割を果たすことができる数少ない業種の1つである。再エネ化事例では、セメント業界において業界全体の排出削減量の35%がCCSを使用している。より多くの排出削減は – 部門の合計の20% – 新しいセメントタイプとクリンカーの代替品がもたらすだろう。
・鉄鋼部門
 鉄鋼業界は現在大規模な石炭利用者であり、セメント産業の約半分のCO2を排出している。再エネ化事例では、基準事例と比較して、産業からの排出量が2050年には90%減少して0.6Gtになる。この削減量の3分の1はCCSで達成され、25%は再生可能エネルギー(大部分はバイオマス)に由来し、40%はエネルギーおよび材料効率措置に由来する。
・化学部門
 化学および石油化学産業の排出量は、鉄鋼業界の排出量と同様である。業界の生産からの直接的なCO2排出量は、2050年までに3 Gtから1.3 Gtに削減される可能性がある。これらの削減量の約1.1Gtは材料効率の進化により、そして残りの0.7Gtはエネルギー効率措置、再生可能エネルギーとCCSから来る可能性がある。

○建物
 暖房と冷房は、建築部門の総エネルギー需要の80%を占めている。空間暖房だけでも、建物の中で必要とされるすべての熱エネルギーのうちで最大の量を占め、全体の約60%に達する。現在の冷却比率は小さいが、2050年までには冷却需要は空間暖房の需要以上に増加すると予想される。
・多様な再生可能技術でエネルギー使用効率を大幅向上
 建物には、再生可能技術についての多様な選択肢がある。それらには、バイオエネルギー、太陽光発電パネルと太陽熱温水器、地熱エネルギーと電化、ならびに再生可能エネルギーに基づく地区エネルギーネットワークが含まれる。また、建物の設計は、暖房や冷房のエネルギー使用効率を大幅に向上させる床暖房や統合建物包囲システムなどの手法とともに、再生可能エネルギーの統合を促進することになる。
・家電製品によるCO2排出削減
 建物では、家電製品は(電気の使用に関わる間接的な排出量を減らすために)潜在的な電力の1/3を占め、次いで空間暖房となる。暖房の排出削減のために、より良い断熱材のような建築棟の改善が削減ポテンシャルの30%を占める。加熱とその他の機能の電化はその他20%を占め、再生可能エネルギーの直接使用は50%を占める(冷却のための配置を含む)。
 より効率的な冷却システムおよび電気器具は、発電による排出を節約することもできるが、これらは建物セクターに含まれない(電力セクターで排出削減が行われるため)。
・太陽熱温水器が効用大
 今日と2050年の間に、熱が生産される方法も変化するだろう。 太陽熱温水器は、再エネ化事例の下で産業と建物の両方でより重要な役割を果たし、最終的なすべての再生可能エネルギーの使用量の約15%を占める。これは世界中のすべての最終エネルギー使用量の9%に相当し、太陽熱ヒーターが巨大市場となることを意味する。建物では、再エネ化事例に基づいて設置された総太陽熱温水能力は、2030年までに55億4千万m2に達し、2050年には117億m2になる。産業用では現在よりもかなり高く、2030年には2億4千万m2、2050年には3億6,950万m2に達する。
・ヒートポンプ
 ヒートポンプの使用は、多くの先進国市場で著しく増加するだろう。ヒートポンプは、熱を発生させるための燃料を、再生可能エネルギーによる電気に置き換える。産業界では、熱と発電を組み合わせたプロセス熱を生成するためのバイオエネルギーも成長する。
・早期の対応が不可欠
 再エネ化事例では、2020年までにすべての新建物では化石燃料を使用しないと想定される。保管建物の残りの部分は、今日の既存の保管建物からのものになる。改築のための追加的な努力がなければ、2050年にこの既存保管建物の約60%が化石燃料に依然として依存し続けるであろう。

○輸送
 再エネ化事例分析では、運輸部門は、参照事例と比較して、2050年の総排出削減量の約20%を占めるであろう。乗用車が最も多く寄与し、次いで貨物輸送となる。
・バイオ燃料が鍵となる
 今日、全部門の中で最も再生可能エネルギーシェアの低い輸送では、再生可能エネルギー総使用量における液体バイオ燃料とバイオメタンのシェアは、2015年には4%から2030年には12%に、2050年には26%に増加するだろう。絶対的に言えば、これは2015年の1,210億リットルから、2030年には年間約5,000億リットルへと、4倍の伸びを示す。2030年以降その量は倍増し、2050年までに年間12,000億リットルになる。この総量のほぼ半分は、2050年には、現在はバイオ燃料のわずか1%しか供給していない高度液体バイオ燃料に由来し、従来のバイオ燃料よりも幅広い種類の原料から作られるであろう。
・長距離輸送用途では課題が残る
 長距離貨物輸送、航空輸送、船舶輸送には難題が残っている。これらの用途は、世界の輸送部門の総エネルギー需要の約半分を占めている。電化の可能性は限られている。
 バイオ燃料は、現在、これらの輸送モードの主な解決策である。航空部門が従来の石油由来灯油から高度なバイオ燃料に切り替えると、その燃料の総生産量の約40%を消費することになる。しかし一般的には、輸送用バイオエネルギーについては、その原料を栽培することは食料生産のために作物を栽培する土地を奪うかもしれないので、慎重なアプローチを必要とする。
 水素または革新的な蓄電法は、バイオ燃料の必要性を低減する可能性がある。

○エネルギー効率改善による削減
 追加の排出削減は、建物で使用される機器のエネルギー効率改善や、より効率的な産業用モーターの使用、より良い産業用エネルギー管理システムの導入など、需要側の措置からもたらされる。これらの削減量は、各最終用途部門の分析に含まれている。また、発電においてでも説明されていれば、その部門は2050年に必要なCO2排出削減量の3分の1を占めるだろう。

2)新技術の適用
○CCS
 CCSは業界の再エネ化事例に基づいた主要技術である。 しかし、その見通しは不確実であり、実現の可能性が位置、地質、水資源およびその他の要因に依存する。再エネ化事例では、基準事例と比較して、産業からの排出量が2050年には90%減少して0.6Gtになる。この削減量の3分の1はCCSで達成され、25%は再生可能エネルギー(大部分はバイオマス)に由来し、40%はエネルギーおよび材料効率措置に由来する。
・電力貯蔵
 電力貯蔵は、多様な再生可能エネルギーの、より高いシェアを統合するための別の重要な選択肢である。
ⅰ)蓄電:再エネ化事例分析では、設置された太陽光および風力の合計容量が5,000GWになる2030年までに、蓄電容量が1,000GWを超える。この貯蔵容量は、電気自動車から600GW、揚水力から325GW、定置バッテリー貯蔵庫から125GW、中古車バッテリーから50GWにと分割される。
ⅱ)EVによる蓄電:総貯蔵容量は2050年までに3,000GW近くに増加し、稼働中のEVはこの合計の大部分を占める。
ⅲ)天然ガスによるバックアップ:再エネ化事例は、天然ガスによるバックアップ容量も重視している。そのような目的のために設置された総ガス容量は、2050年までに5,000GWに達するだろう。

4,再生可能エネルギーへの期待   = まとめ =
 再エネ化事例では、伝統的なバイオエネルギーの使用はほぼゼロになるため、2030年の再生可能エネルギー使用量145EJ(および2050年の同235EJ)は、ほぼ完全に現代の再生可能エネルギー技術から得られるであろう。総合的には、再エネ化事例では、現代の再生可能エネルギーの使用量は、2050年までに現在の7倍になる。輸送、暖房、冷房のための再生可能エネルギーの直接使用については、最終再生可能エネルギーの総使用量の、今日の80%と比較して2030年には66%と減るのは、2030年の方がはるかに効率的なことと、再生可能な電気量のシェア増に依るためである。最終使用分野における可能性は、2050年にも同様に高いままである。伝統的なバイオエネルギー利用の大幅な減少にもかかわらず、最終的な再生可能エネルギー総使用量における最終用途部門の割合は高い。

図4:再エネ化事例における、2030年および2050年の部門別および技術による最終的な再生可能エネルギー利用

[注目点]再エネ化事例においては、最終再生可能エネルギーの使用量は、2050年において現在の4倍になる。電力と熱は、全再生可能エネルギーの約40%と44%をそれぞれ消費し、輸送は約16%を消費する。
                                           == 以上 ==

SEKISUI 『スマートパワーステーション“100% Edition”』を発売

-エネルギー自給自足率100%が可能で「電力不安」を限りなくゼロに近づけた住まい-

[出典:2016年12月12日  積水化学工業株式会社 セキスイハイム プレスレリース
http://www.sekisuiheim.com/info/press/20161212.html ]

積水化学工業株式会社 住宅カンパニーは『スマートパワーステーション“100% Edition”』を2017年1月2日(月)より全国(北海道、沖縄、本州の多雪地域を除く)で販売を開始と発表。

2020年以降の温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」が発効し、日本は温暖化ガスを2030年に2013年比で26%減らす目標を掲げており、今後国を挙げて一層の削減が必要になる状況を受けてのこと。暮らしの省エネ化は当たり前になってきており、自動車においては電気自動車(EV)の普及が本格化、住宅においてはZEH*1 が今後の住宅の標準仕様になっていくと想定され、今回セキスイハイムがこれまで蓄積してきた環境関連技術を集大成したスマートハイムシリーズのフラッグシップ商品『スマートパワーステーション“100% Edition”』を発売することになった。
*1 ZEH(ゼッチ):(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは、住宅の高断熱化と高効率設備により、快適な室内環境と大幅な省エネルギーを同時に実現した上で、太陽光発電等によってエネルギーを創り、年間に消費する正味(ネット)のエネルギー量が概ねゼロ以下となる住宅。

    [図1]建物の外観

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『スマートパワーステーション“100% Edition”(SPS100と略す)』の概要

SPS100※1の仕様は次の5機能を備えたもので、快適な暮らしをしながらエネルギーの自給自足率100%※2を実現するもので、長期停電や電気代上昇という電力不安を限りなくゼロに近づけることになる。
【機能1】大容量の太陽光発電システム(PV)
【機能2】コンサルティング型ホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS*2)
(「スマートハイム・ナビ」と称す)
【機能3】トリプルガラス樹脂サッシの採用による断熱性能の強化
【機能4】大容量でコンパクトサイズの屋内設置型蓄電池(「e-Pocket」と称す)
【機能5】EVやプラグインハイブリッド車と住宅の間で電力を融通するV2H*3システムとの併用

*2:Home Energy Management System の略。家庭で使うエネルギーを節約するための管理システム。 家電や電気設備とつないで、電気やガスなどの使用量をモニター画面などで「見える化」したり、家電機器を「自動制御」したりする。
*3:Vehicle to Home の略。電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド自動車(PHV)、燃料電池車(FCV)などの自動車が蓄電池に蓄えた電力を家庭用電力として利用する動きのことを指す。

1.大容量でコンパクトかつV2H併設を実現した屋内設置型蓄電池を搭載
◆コンパクト(縦495×横760×幅525mm)で大容量(12.0kWh)の屋内型蓄電池を新たに採用。蓄電池を構成するセルが大判のフィルム型であるため軽量、かつ耐久性もアップ。20年の長期保証付き。
◆この蓄電池とV2Hシステムとの併用を可能とすることにより、PVで発電した電力を大容量で貯めることができ、災害などによる停電時にも普段通りの生活に必要な電力をほぼ確保可。

2.HEMS制御付き全室空調(「快適エアリー」と称す)と断熱性向上で、快適かつ17%省エネを実現
◆2011年の「スマートハイム」発売以来、HEMSの搭載を推進し、現在、業界最多※3の3万6830棟に搭載。ビックデータを運用・管理している。そのデータを活用して開発したHEMS制御により全室空調「快適エアリー」で省エネを実現させている。(2016年4月導入)
◆上記に加えて内外2枚のガラスをLow-Eガラスで構成した「トリプルガラス樹脂サッシ」を採用。高い断熱性能を実現し、冷暖房のエネルギー消費量を従来より約17%削減(弊社モデルプランにて算出)する※4。
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 ※1 SPS100は建築地H25年省エネ基準5地域以南、単世帯(5人以下)、PV13.77kW搭載、
蓄電池容量12kWh+V2Hシステム(日産リーフ30kWh接続)、トリプルガラス樹脂サッシ採用、UA値0.51    以下、HEMS制御付き全室空調「快適エアリー」、高効率給湯器(AFP4.0  以上)、年間消費電力が弊社   HEMS実績データで中央値以下。
次の場合で発生する買電量(電力会社から購入する電気)は自給自足率100%算定上、考慮されていな   い。
①雨天や積雪時等、太陽光発電量を消費電力量が上回る状態が数日間継続した場合に
発生する買電
②蓄電池の運転状態確認のため、メンテナンスモード(年2回)動作が発生時の買電
③蓄電池の逆潮流防止のために発生する買電。また機器の初期性能値で算定している。
経年による太陽光発電の低下、蓄電池・電気自動車の容量の低下は考慮していない。
グリーンモード運転(太陽光の余剰電力を有効活用する自給自足の暮らし)を前提としている。住人のライフスタイルにより(急な電力使用の増加など)自給自足率100%にならない場合がある。なお、家電機器の品質保証上、系統連携が必要。
※2 自給自足率とは、1年間で、1時間であっても電力を購入しない割合 :
PV自家消費(放電含む)[kWh]/総消費電力[kWh]時間別合計×100[%]
※3 大手住宅メーカーのHEMS累積販売数から弊社調べ。2016年9月末日時点出荷数。
※4 弊社モデルプランにて試算。従来とはアルプラ樹脂アルゴンガス仕様でUA値0.6程度。

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■SPS100の開発経緯

1997年から業界に先駆けてPV搭載住宅の発売を始め、その累計数は2016年9月末日時点で17万7855棟となっている。
2011年からは「スマートハイム」シリーズを発売し、業界に先駆けてHEMSや家庭用蓄電池、V2Hなど先進機器を住宅に搭載。エネルギーの自給自足が住宅に求められる要件になると判断し、商品の省エネ、創エネ、蓄エネ性能の向上を進めてきた。入居済みのセキスイハイムを対象として行った2015年の調査では、家電込みゼロエネルギー邸が前年比約2倍の32%、ZEH相当邸が27%に達している。SPS100は、弊社がこれまでの「スマートハイム」シリーズで蓄積してきた技術を集大成した商品。
一方、国は2020年から再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)を改正することを決定しており、弊社としては、FITに関わらずPVによる発電電力を最大限に活用できるSPS100を発売することで、一層の顧客メリット創出と業界他社との差別化を強化する狙いもある。
この仕様により、日中はPVで発電した電力を中心に生活、余剰電力は蓄電池(あるいはEVなどの蓄電池)に充電し夜間に備える(それでも余剰分は売電)。夜間は蓄電池の電力を使い、電気を買わない暮らしが可能になる。また、災害などによる停電時にも限りなく普段通りの生活を可能にする(条件あり※1参照)。

    [図2]20年間の光熱費比較

【試算条件】
≪共通≫建築地:愛知 / 電力契約:中部電力「スマートライフプラン(夜とく)」
/ 太陽光買取価格24円+税/kWh(平成28年度10kW以上)
≪一般オール電化住宅≫ UA値0.87 / 全館空調24時間運転
≪SPS100≫ 設備仕様※1の条件参照、
H25年省エネ基準5地域以南、単世帯(5人以下)でスマートパワーステーションに居住のHEMS実績データ(2015年4月~2016年3月)384邸中央値及び気象庁の過去6年間の日照時間データの平均値に基づき、試算した結果になる。年間消費電力量は約6000kWhを想定。

■新商品『SPS100』の技術

1.大容量コンパクトかつV2H併設が実現した屋内型蓄電池を搭載

新たに採用した大容量コンパクトの屋内型蓄電池は、弊社が大判のフィルム型セルを独自開発し、京セラ株式会社が蓄電池システムを構成したもの。
サイズは縦495mm×横760mm×幅525mmで、12.0kWhの大容量を実現、従来の屋内型と比べ容量が増えたため、PVで発電した電力を夜間により多く利用することが可能な上、200Vの家電の使用にも対応している。スペースは従来の弊社屋内型蓄電池の約2分の1で、収納スペースに設置することができるなど省スペース化も図っている。
このほか、20年の長期保証※5も付けている。また、弊社独自のV2Hシステムとの併用も可能なため、PVと大容量蓄電池とV2Hの3つの電源がつながることで、より大容量の電力を確保でき、エネルギー自給率を向上できる。
※5 容量保証20年、機器保証15年(パワコン含む)。

2.HEMS制御付き全室空調と断熱性能向上で、快適かつ17%省エネ(弊社従来比)を実現

2011年の「スマートハイム」発売以来、HEMSの搭載を推進し、現在、業界最多※3の
3万6830棟に搭載。HEMSビックデータを運用・管理している。そのデータを活用して
開発したHEMS制御により、全室空調「快適エアリー」しながら省エネを実現させている
(2016年4月導入)。それに加えて、「トリプルガラス樹脂サッシ」は、内外2枚のガラスを
Low-Eガラスで構成し、その中にさらにガラスを入れた2層構造。全体で27mmの厚さがあるが、その中に9mmのアルゴンガス層を充填した2つの層があり、これにより国内最高クラスの断熱性能”U値(熱貫流率)1.57”を実現している。
住宅では一般的に開口部から熱が移動する割合が高くなるが、トリプルガラスサッシの採用で、冷暖房のエネルギー消費量が従来より約17%削減し、夏は冷房効果が高まり、冬はより暖かで省エネかつ快適な暮らしを可能にする。

    [図3]電力の流れ

■『SPS100』の自給自足率100%の検証

HEMSでは邸別データをクラウド上で管理しており、居住者の省エネかつ経済的な暮らしに役立てている。『SPS100』では弊社のHEMSデータを分析することで、より実態に近い数値で算出することができた。これにより、居住者が住まいの地域や家族構成別の消費電力分布を抽出。居住者ごとの365日24時間のエネルギー収支(PV発電量、売電量、買電量(主要設備ごと)、自家消費量、蓄電量、放電量、充電残量)から、“100% Edition”にした場合のエネルギー自給自足率を分析し、スマートパワーステーションに実際に住んでいる(5地域以南かつ単世帯)半数以上の顧客が、理論上エネルギー自給自足率100%の暮らしが快適性を維持しつつ実現できることを確認している。さらに停電時にも通常時とほぼ同等の生活が可能となる。

■販売目標・販売価格

販 売 目 標 : 年間100棟を計画
販 売 価 格 : 3.3㎡あたり80万円台から(消費税別途)
【延床面積161.72㎡ モデルプランにて試算】

*販売価格には、建物本体材料費、工事費並びに太陽光発電システム13.77kW
(パネル・パワーコンディショナ含む)、蓄電池12kWh、HEMS、オリジナル全室空調システム(快適エアリー)、V2H用パワコン、トリプルガラス樹脂サッシ、高性能給湯器の価格が含まれる。
旧家屋解体工事、屋外給排水工事、屋外電気工事、外構造園工事費等の費用及びEVなどは別途となる。地域・仕様により販売価格は異なる。

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【注:さらに、耐震・耐久・気密断熱・省エネ・遮音防音等の技術的説明を知るには、
セキスイハイムHP( http://www.sekisuiheim.com/ )のメニュー「住まいの性能」を参照】

EPFL*から創業の一社が、効率2倍の住宅用ソーラーパネルを作る

* Swiss Federal Institute of Technology in Lausanne:スイス連邦工科大学ローザンヌ校

出典:http://actu.epfl.ch/news/an-epfl-startup-makes-residential-solar-panels-twi/

07.09.16 – 創業仕立てのInsolite(インソライト)社によって開発された36%の収率の太陽電池パネルは、従来のパネルの二倍までのエネルギーを配することができる。同社は、非常に高性能の太陽電池の小面積に太陽光線を当てる薄構造を思い付いた。結果は極めて効率的な平面型太陽光発電システムとなったのである。
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 同じ表面積で二倍の電力:これこそがインソライト社製太陽電池パネルの特徴なのだ。EPFLイノベーションパークを本拠とする会社は、わずか約18-20%の性能でしかない現行市場品に対し、収率(=受光エネルギーから生産される電力量)36.4%のプロトタイプを開発した。世界記録と言ってよいこれらの結果は、ドイツに本拠を置く独立したラボであるフラウンホーファー研究所によってプロトタイプが検証されている。

すべての太陽光線をスーパーセルに焦点合わせる
 彼らはどのようにしてこのような高収率に達したのか?
プラスチックから作られた透明平坦かつ非常に薄い光学系が、極めて高性能なセルの微小表面積部分に太陽光線を当てる。42%の収率を誇るこれらのセルは、異なる波長の光線を捕捉するように特別に設計された多数の層で構成されている。これらを製造するのは高価であるため、こうしたスーパーセルは現時点では宇宙のような特定の分野でのみ使用されている。

 それで、創業者達は他の方策を採った。すなわち、太陽電池パネル自体の収率を高める
ことに取り組む代わりに、同社は光の波をスーパーセルの微小セグメント(サイズは数平方mm程度)に集中させるレンズを使う。「それはシャワーのようなものだ:すべての水は一つの小さなドレインを下降するのであって、シャワーのフロア全体をカバーするドレインの必要はない。」創業社のCEOであるローラン・クーロットは言う。

 イノベーションの核心は、入射角のいかんに拘わらず太陽光線を100%捕捉することにあり、創業者により特許化されたマイクロ追跡システムにある。射出成形された透明板は、拡大鏡の小規模なネットワークとして機能するミリ単位の大きさのレンズの配列として装備されている。これは金属フレームによって、一日の間に数mm移動される。太陽の位置をセンサーとして、リアルタイムで検出するように行われる、このわずかな動きが収率を最大化する。同社は、有望な新興企業に与えられるEPFLのイノベーション賞の一つとして、応用フォトニクスデバイス研究室で、その革新技術を開発した。
 システムはわずかなスペースを取るだけなので、どのような太陽電池パネルにも導入できる。クリストフ・モーザは太陽光を用いて水素を生成するプロジェクトのための太陽光集光器を開発していたので、彼の研究室の中にチームのために場所を設け、重要な専門知識を提供した。モーザによると、インソライト社のモジュールは、その分野ではかなり関心を持たれていたようだ。

太陽光エネルギーをもっと競争力あるようにする
 同様のシステムは世界中のいくつかの研究室で開発されたが、EPFLの新興企業はほぼ
市場準備ができていた程に、システムを迅速に製造する早業で成功させた。「すべてのコンポーネントを容易に大量生産する、ことが最初から設計された。」とマチュー・アッカーマン同社CTOは述べている。

 創業社の三人の創設者は全員、操業開始する前は業界で働いていたEPFL卒業生だ。彼らは自分の会社を設立する前に、空き時間に自分達のアイデアを温めることから始めた。
「私たちの目標、すなわち、急速に競争力のある価格で市場に投入することができる太陽電池パネルを開発すること、に到達するために必要なものを、業界で働くことで得ることができた。」

 創設者達は、彼らの太陽電池パネルが消費者が支払うkWh当たりの価格を下げるだろうと確信している。システム購入費は、おそらくもう少し高価になるだろう。「しかし、これはすぐに生成される追加のエネルギーによって相殺されるであろう。」とフロリアン・ゲルリヒCOOは述べている。「ソーラーパネルの価格は近年急激に低下したが、競争力のあるコストで電気を生成することは十分なされていない。」と彼は言う。「住宅用システムでは、太陽電池パネルは2015年に米国の総設置費用の20%未満であった。たとえ太陽電池パネルは無料であったとしても、これは常にシステムのコストを相殺しない。現在、太陽エネルギーの開発者が獲得した利益のほとんどは、補助金から来ている。しかしこれらの補助金は減少している。」

 設置の効率性とし易さを組み合わわせることで、創業者は、化石エネルギーに対して競争力のある太陽光発電システムを作ることによって、困難を振り払うことを願っている。
「インソライト社は非常に革新的なシステムを設計しており、これらの初期のプロトタイプは外部評価で印象的な収率を示した。」クリストフ・バリフ、EPFL太陽光発電研究所のディレクターは述べている。「彼らは今、商用サイズのシステムがどれくらいの性能を示すのか、そして製品の経済的ポテンシャルを証明するのか、彼らの概念の限界をテストする必要がある。」