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REN21「自然エネルギー世界白書2018」公表:電力部門の変革は加速している − しかし、熱利用と交通でも早急な対策が求められている

                           2018年6月4日
[出典]ISEP 環境エネルギー政策研究所
REN21, Renewables Global Status Report, “自然エネルギー世界白書 2018”
https://www.isep.or.jp/archives/library/11103

[管理者注]原文をさらにまとめて、簡略化した。とくに図は載せていない。

1, 178GWの自然エネルギーが2017年に全世界で導入された。
 REN21の”自然エネルギー世界白書(GSR)2018″によれば、自然エネルギー発電設備は2017年に世界の発電容量の正味増加分の70%を占め、近年で最大の増加となった。
 自然エネルギー発電設備の導入量順位は、水力、風力、太陽光の順で、この3種で9割以上を占める。中でも太陽光の伸びは格段であった*。

* 太陽光発電の新設容量は記録的な規模となった :2017年に新設された太陽光発電の設備容量は前(2016)年と比べて29%増の 98GWだった。これは、石炭火力発電、天然ガス発電、原子力発電の正味拡大分の合計よりも多かった。風力発電も自然エネルギー発電の 拡大に貢献し、世界全体で52GWが新設された。

 しかし、合わせて世界の最終エネルギー需要の5分の4を占める熱利用と交通部門での自然エネルギー利用は、電力部門に比べて大きく遅れをとったままである。

2, 新設自然エネルギー発電への投資は、火力発電への巨額の補助金が現在もあるにもかかわらず、火力発電所と原子力発電所の正味追加分への投資額の2倍以上となった。2017年には発電部門への投資の3分の2以上が 自然エネルギーへと向けられた。その理由は、自然エネルギー発電の コスト競争力が高まっていることに加え、今後も電力分野での自然 エネルギー割合は増加の一途をたどると考えられているからである。

 自然エネルギーへの投資は特定の地域に集中している:2017年の世界の自然エネルギー投資の約75%が中国と欧州、米国に向けられた。

 しかしながら、GDPあたりの投資額で見ると、マーシャル諸島、ルワンダ、ソロモン諸島、ギニアビサウ、その他多くの発展途上国において、先進国や新興経済国と同等かそれ以上の投資が行われている。

3,もし世界がパリ協定に基づく目標を達成しようとするならば、熱利用部門と交通部門は電力部門と同じ道筋を、速く辿る必要がある。ところが熱利用と交通部門では以下の状況が見られる:

 太陽光発電の設備容量は前(2016)年と比べて29%増の 98GWだった。これは、石炭火力発電、天然ガス発電、原子力発電の正味拡大分の合計よりも多かった。風力発電も自然エネルギー発電の拡大に貢献し、世界全体で52GWが新設された。

3-1, 熱利用部門では自然エネルギーの導入はほとんど進まなかった:現代的な自然エネルギー*2は2015年に世界全体の熱生産量合計の約10%を供給したにすぎない *3。電力部門の自然エネルギー目標は146カ国が設定している一方で、熱利用部門の自然エネルギー利用の国家目標は全世界で48カ国にしかない。

*2「現代的な自然エネルギー」とは、非効率で空気汚染を引き起こす伝統的バイオマス燃焼を除く、現代的な燃焼技術や排気処理による自然エネルギー利用を指す。
*3 4項参照。

3-2,交通部門では、依然として化石燃料が圧倒的に優勢ではあるものの、電動化が進むことで自然エネルギー導入の機会となりうる:毎年3,000万台以上の電動二輪車や電動三輪自動車が世界の道路輸送で増加 しており、120万台の電気自動車が2017年に販売され、2016年と比べて約58%増加した。電力は交通部門のエネルギー需要の1.3%を供給し、その4分の1が自然エネルギーによるものであった。さらにバイオ燃料は2.9%を供給した。しかしながら、全体として見ると、交通部門のエネルギー需要の92%は石油により賄われており、交通部門での自然エネルギーの利用目標を定めているのは42カ国にすぎない。

4,最終エネルギー消費における自然エネルギー割合(部門別 2015年)

 伝統的バイオマスを除いたケースでは、自然エネルギーの占める割合はさらに低下する。1割程度となろう。

 これらの部門を転換していくためには、正しい政策枠組みを実現することが必要であり、遅れている部門での自然エネルギー技術のイノベーションと発展を刺激する必要がある。
 アルソロス・ゼルボスREN21議長はこう付け加える:「エネルギー転換を実現するためには、政府による政治的リーダーシップが必要となる。化石燃料と原子力への補助金をやめること、必要なインフラへの投資を行うこと、熱利用と交通部門への意欲的な目標と政策を確立することがその例である。こうしたリーダーシップがなければ、世界が気候変動と持続可能な発展に向けた誓約を 達成することは難しくなるだろう。

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[補足]
 REN21「自然エネルギー世界白書」について
 REN21の自然エネルギー世界白書2018は、2017年末までの発展と傾向、可能な情報については2018年初頭までの傾向をまとめている。

 自然エネルギー世界白書は2005年に初めて公表され、世界の自然エネルギー
市場や産業、投資、政策動向についての状況と直近の進展、傾向をまとめた包括的かつ時宜に適した年次報告書である。分析や予測は意図的に排除されている。データは世界中の900名の貢献者、研究者、著者のネットワークから提供されている。  www.ren21.net/gsr-2018

  REN21について
“Renewable Energy Policy Network for the 21st Century”
(本部:フランス パリ)は、2004年に設立され、国際的な自然エネルギー政策に関する多様なステーホルダーをつなぐネットワーク組織。
     www.ren21.net/

  その他の参考資料
 REN21「自然エネルギー世界白書」関連の資料は、ISEPの「自然エネルギー
世界白書」特集ページからもダウンロードできる。「自然エネルギー 世界白書2016年版」までのレポート(日本語、英語)、「自然エネルギー 世界白書2017年版サマリー」(日本語)もこちらの特集ページに掲載して いる。↓

   ISEP特集「自然エネルギー世界白書」- www.isep.or.jp/gsr/

                               以上

環境産業の市場規模・雇用規模等に関する報告書

[出典]
「環境産業の市場規模・雇用規模等に関する報告書」
平成30 年3 月  環境産業市場規模検討会
http://www.env.go.jp/press/files/jp/109313.pdf

[注]報告書に記載されているデータは膨大な量となるので、SDGs(持続可能な開発の目標)項目の内、クリーンエネルギー利用と地球温暖化対策に絞って記載した。
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環境産業の定義:Eurostat(2016)に近づける形で、「供給する製品・サービスが、環境保護および資源管理に、直接的または間接的に寄与し、持続可能な社会の実現に貢献する産業」と定義し、環境負荷の低減に寄与する可能性のある産業を幅広く対象に含めることとする。

環境産業の定義と分類:平成24年度に、「環境汚染防止」「地球温暖化対策」「廃棄物処理・資源有効活用」「自然環境保全」の4分類とした。

新規追加を検討するモノ・サービス
・炭素繊維素材・製品
航空業界は、「複合材による機体の軽量化」をCO2排出量削減に最も効果がある 施策と認識。2020年度CO2排出量を2005年度比で21%削減する目標を立てている。
炭素繊維製造業の市場規模は、2002年度375億円であったが、2015年度には1,238億円に拡大している。
・宅配ボックス
平成29年度の住宅用が約18億円、非住宅用が約10.7億円の規模と見込んでいる。

環境産業に係る市場規模及び雇用規模の推計
1,市場規模
図1、環境産業全体の市場規模推移

各論
図2、地球温暖化対策分野の市場規模推移

図3,廃棄物処理・資源有効利用分野の市場規模推移


資源有効利用分野では建設リフォーム・リペアの比重大

図4,自然環境保全分野の市場規模推移


持続可能な農林水産業の比重大きいが、中でも最近は持続可能な森林整備・木材製造が伸びている。

2,雇用規模の推計
図5,環境産業全体の雇用規模推移

各論
図6、地球温暖化対策分野の雇用規模推移


最近はクリーンエネルギー利用の雇用伸びが大きい

                           以上

世界的なエネルギー転換の見通しと再生可能エネルギーの役割

[出典:IRENA(International Renewable Energy Agency)ホームページに掲載されている報告書「エネルギー転換の視点~低炭素エネルギーシステムへの投資ニーズ」
http://www.irena.org/DocumentDownloads/Publications/Perspectives_for_the_Energy_Transition_2017.pdf
の第3章のみを取り上げて、当サイト責任者が要約した。]

[注]なお、報告書はIRA(International Energy Agency)とIRENAの共同作成によるものであるが、本出典はIRENA協会が独自に作成したものである。報告書全体の要約は8月の投稿に掲載している。

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*方法論
 シナリオはIRENAのREmap(Renewable Energy Roadmap=再エネ化事例)ツールに基づいて開発されている。再エネ化事例アプローチは、すべてのG20諸国にとって、セクターとエネルギー・キャリアーによるエネルギー供給と需要を評価する、国レベルでのエネルギーシステム開発の技術経済評価法である。

1、基準事例と再エネ化事例の定義
 この分析は、各国のエネルギー部門の現在および計画された政策と市場の期待される発展に基づいた、最も可能性の高い基準事例から始まる。IRENAは、2015年から2050年までの、各国のエネルギー計画と目標について、G20諸国からのデータを収集している。
 各国は現在の再生可能エネルギー容量を増やし、エネルギーシステムのエネルギー効率を向上させることを目標としているため、重要な再生可能エネルギーの導入とエネルギー効率の改善は、既に基準事例に含まれている。次いで、この分析ではエネルギー移行の基準事例を超えている、低炭素技術の進路を検証する。これは再エネ化事例と喚ばれる。
 再エネ化事例でカバーされる技術は:
・再生可能エネルギー技術と、化学物質とポリマーの生産のための原料(この章の後半では”RE”と呼ばれる)。
・エネルギー効率措置(“EE”) と、効率を向上させる広範囲の電化(ELEC)。
・工業用炭素捕集と貯蔵 (“CCS”)。
・リサイクルなど材料効率技術 (“OHERS”)。
 再エネ化事例は、地球温暖化を66%の確率で、工業化前レベルより高くても2℃未満に制限する、パリ協定の目標に沿った脱炭素化エネルギーシステムであるエネルギー移行を探究している。それには、エネルギーCO2排出量は、2015年の33Gtから2050年には10Gt未満に減少する必要があり、2060年までにゼロに低下してそのレベルに留まる必要がある(排出量を1.5℃に制限するには、ゼロ以下に下げる必要あり)。

2,CO2排出削減目標と行程
1)背景
 2020年以降の地球温暖化対策の国際的枠組みを定めたパリ協定では、地球温暖化対策にすべての国が参加し,世界の平均気温の上昇を産業革命前の 2℃未満(努力目標 1.5℃)に抑え,21世紀後半には温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目標とすることになった。
 一方では2050年までに世界のGDPは3倍になると予測されており、このままでは基準事例に示されるようにCO2排出量は増大してしまうので、エネルギーのCO2排出量は60%以上減少させなければならないと言う厳しい状況になる。

2)目標
 エネルギー効率措置と再生可能エネルギーは、地球規模のエネルギーシステムを脱炭素化するために必要な排出削減量のシェアを提供する。
○2030年まで
・エネルギーと材料の効率改善は、2030年までに排出量を約4Gt削減できるが、これは必要とされる排出削減量の約30%である。
・電化は別の1.5Gt、すなわち必要とされるものの10%を削減する。
・G20諸国のボトムアップ分析に基づいて特定された再生可能エネルギーオプションは、さらに10Gtの排出を削減することができる。
 これらの措置の結果、2030年の排出量は2030年に25.5Gtに減少する。
   (残りの化石燃料の燃焼は、年間約22GtのCO2を排出する。)
○2050年に向けて
 上記レベルは、2030年に世界を2℃の経路に置くのには十分だが、しかし世界をこの経路に維持するには、2030年から2050年の間にさらに努力を強化する必要がある。
 すなわち、2050年までにエネルギー関連のCO2排出量が10Gt以下になることが求められ、2015年の水準より70%低く、基準事例よりも31Gtも少なくしなければならない。
・これらの削減量の約半分は、再生可能エネルギー技術によって達成される。
・エネルギー効率の向上と電化は、他の半分の大半を占めるであろう。
・削減の残りの10%は、とくにCCS、材料効率改善、構造変化など、業界における追加的な措置に由来する。

3)行程
○再エネ化事例に基づく
 削減目標を達成するには、図1に示すように再生可能エネルギーが2050年の総排出量削減の半分を担い、45%はエネルギー効率の向上と電化による。

  図1:基準事例と再エネ化事例における技術別CO2削減効果,2015-2050

○総エネルギー需要の推移
 図1の行程を総エネルギー需要の観点から分析すると、図2のようになる。

  図2:エネルギーキャリアによる2015-2050年間の全最終エネルギー消費

[注]建物、産業、輸送だけが含まれる。化学物質およびポリマーの製造用燃料の非エネルギー使用は除外される。

 図2は、2015年から2050年までの総エネルギー需要の推移を基準事例と再エネ化事例の両方で示している。再エネ化事例では、全最終エネルギー消費(TFEC=total final energy consumption)期間中の需要は平坦である。
・TFECにおける化石燃料のシェアは、70%から30%に低下している。
・再生可能エネルギーの直接使用は、10%から35%に増加する。とりわけ最終的な全エネルギー消費における最終バイオエネルギー利用の割合は、2050年に約13%から20%(約50EJから80EJ)に上昇する。これは、7%の輸送用バイオ燃料と14%の固体および気体状のバイオ燃料に分けて、発電および加熱することができる。
・太陽熱温水器の使用は、産業および建物用に約35EJまで増加する。
・石油のシェアは大幅に低下し、輸送はバイオ燃料と電気に依存する。しかし、今日の水準の半分の量の油が、道路以外の旅客輸送および貨物の需要を満たすために使用されることになる。

○化石燃料の扱い
 基準事例と比較すると、最終エネルギー期限(2050年)では、石油とその製品に大きな変化がある。
・基準事例では、石油使用量は123EJから170EJまで増加するのに対し、再エネ化事例では石油需要は55EJまで低下する。
・現在のレベルと比較すると、石炭の使用は半分以上であり、産業部門のいくつかの用途でのみ使用されている。
・再生可能エネルギーが利用されていない産業および建物への暖房を供給するために、ガスはこの移行において重要な燃料として残っている。

3、CO2排出源と削減法
 最大のCO2排出部門は、発電と産業である。 これらは、今日のエネルギー関連のCO2排出量の約65%を占めている。残りの35%は、輸送、建物および地域暖房に由来する。建物のシェアは低いが、電気使用に関連する間接的な排出が含まれている場合にはこれが増加する。
1)用途別排出部門
○発電
 発電はCO2排出量の最大の部門別シェアを占めるので、この部門を2050年までに脱炭素化することが最優先事項となる。再生可能エネルギーの導入に関しては、発電部門は最終用途の部門よりも進んでいるが、石炭の使用を削減する努力は、その道筋を続けるために強化されなければならない。これは、アジアの急速な成長を遂げる経済における石炭の発電への依存度が高まる中でとくに重要である。とりわけ中国、インド、インドネシアなどの発電部門でCCSのない石炭を段階的に廃止することが最優先事項であるが、2050年まで再エネ化事例のもとではCCSの導入は予見されていない。
・CO2削減には、再生可能エネルギーの大幅増が必須に
 再生可能エネルギーの割合は2030年の基準事例では31%に達し、2015年の23%から増加するであろう。再エネ化事例のもとでは再生可能エネルギーの割合は2050年に82%に達し、基準事例の2倍以上として、今日の水準より約4倍も高くしなければならない。そのため移行には、現在の努力の大規模化が必要となる。
 今日、発電部門における再生可能エネルギーの割合は、年間約0.7%ポイント増加している。脱炭素化目標を達成するには、再生可能エネルギーの割合が全エネルギー創出量の59%に達するように、この比率を2030年までに年間2.4%ポイントと、3倍以上にする必要がある。その増加程度は、2050年まで少なくとも年率1%の割合で継続しなければならない。(図3)

図3,: 2015-2050年における基準事例と再エネ化事例の、技術による発電能力と総発電量

[注目点]電力部門では、再生可能エネルギーが最高の比率を占める。2050年までの再エネ化事例では、風力と太陽光が最大の比率を占めながら再生可能エネルギーの多様な組み合わせが、電力の80%以上を供給することになろう。発電における石炭と石油は排除されよう。
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・再生可能エネルギーの中でも太陽光と風力発電が鍵となる
 2015年末の総発電容量は約6,200GWであった(図3)。基準事例では総発電量は年に180GW増加し、2050年には12,400GWに達する。最大の追加は、太陽光発電と陸上および洋上風力発電の電力であり、全体の70〜80%を占める。導入された総石炭発電容量は、2050年までの期間全体で今日と同じである。比較すると、ガス発電容量は1,500GWから2,900GWに1,400GW増加し、2050年までに総発電容量の最大シェアを占める。
 再エネ化事例の場合、基準事例よりも再生可能電力容量がずっと多く追加される。風力発電量は4,800GWに達し、太陽光発電容量は6,000GWに昇る。
・その他の再生可能エネルギーの寄与
 バイオマス、集光型太陽光発電(CSP)、水力発電などの一連の再生可能エネルギーもまた、柔軟な発電容量を提供する。これらの変更により、再エネ化事例における総発電容量は20,000GWを超え、現在の3倍に達する。
・化石燃料と原子力の扱い
 石油に基づく容量はゼロにまで低下しており、総導入原子力容量は今日と同じままである。天然ガスは柔軟な発電容量を提供するので、2050年までに世界的に約5,000GWのバックアップ容量が補充される。

○産業
 産業は二番目に大きなCO2排出部門で、全世界の排出量の1/3を占める。業界全体が再エネ化事例分析の排出削減量の35%を占める。部門内では、化学物質、石油化学製品、鉄鋼が最大のエネルギー消費者である。しかし、食品や繊維(「他の産業」に含まれる)などのエネルギー集約型部門も、産業用CO2排出量の削減に重要な役割を果たすであろう。
・セメント部門
 セメント製造は、最大のCO2排出産業であると言う点で独特である。セメントを作るには、焼成と呼ばれるプロセスで石灰岩が分解され、大量のCO2が生成される。その結果、業界は全世界のCO2排出量の8%を占めている。これは、CCSが役割を果たすことができる数少ない業種の1つである。再エネ化事例では、セメント業界において業界全体の排出削減量の35%がCCSを使用している。より多くの排出削減は – 部門の合計の20% – 新しいセメントタイプとクリンカーの代替品がもたらすだろう。
・鉄鋼部門
 鉄鋼業界は現在大規模な石炭利用者であり、セメント産業の約半分のCO2を排出している。再エネ化事例では、基準事例と比較して、産業からの排出量が2050年には90%減少して0.6Gtになる。この削減量の3分の1はCCSで達成され、25%は再生可能エネルギー(大部分はバイオマス)に由来し、40%はエネルギーおよび材料効率措置に由来する。
・化学部門
 化学および石油化学産業の排出量は、鉄鋼業界の排出量と同様である。業界の生産からの直接的なCO2排出量は、2050年までに3 Gtから1.3 Gtに削減される可能性がある。これらの削減量の約1.1Gtは材料効率の進化により、そして残りの0.7Gtはエネルギー効率措置、再生可能エネルギーとCCSから来る可能性がある。

○建物
 暖房と冷房は、建築部門の総エネルギー需要の80%を占めている。空間暖房だけでも、建物の中で必要とされるすべての熱エネルギーのうちで最大の量を占め、全体の約60%に達する。現在の冷却比率は小さいが、2050年までには冷却需要は空間暖房の需要以上に増加すると予想される。
・多様な再生可能技術でエネルギー使用効率を大幅向上
 建物には、再生可能技術についての多様な選択肢がある。それらには、バイオエネルギー、太陽光発電パネルと太陽熱温水器、地熱エネルギーと電化、ならびに再生可能エネルギーに基づく地区エネルギーネットワークが含まれる。また、建物の設計は、暖房や冷房のエネルギー使用効率を大幅に向上させる床暖房や統合建物包囲システムなどの手法とともに、再生可能エネルギーの統合を促進することになる。
・家電製品によるCO2排出削減
 建物では、家電製品は(電気の使用に関わる間接的な排出量を減らすために)潜在的な電力の1/3を占め、次いで空間暖房となる。暖房の排出削減のために、より良い断熱材のような建築棟の改善が削減ポテンシャルの30%を占める。加熱とその他の機能の電化はその他20%を占め、再生可能エネルギーの直接使用は50%を占める(冷却のための配置を含む)。
 より効率的な冷却システムおよび電気器具は、発電による排出を節約することもできるが、これらは建物セクターに含まれない(電力セクターで排出削減が行われるため)。
・太陽熱温水器が効用大
 今日と2050年の間に、熱が生産される方法も変化するだろう。 太陽熱温水器は、再エネ化事例の下で産業と建物の両方でより重要な役割を果たし、最終的なすべての再生可能エネルギーの使用量の約15%を占める。これは世界中のすべての最終エネルギー使用量の9%に相当し、太陽熱ヒーターが巨大市場となることを意味する。建物では、再エネ化事例に基づいて設置された総太陽熱温水能力は、2030年までに55億4千万m2に達し、2050年には117億m2になる。産業用では現在よりもかなり高く、2030年には2億4千万m2、2050年には3億6,950万m2に達する。
・ヒートポンプ
 ヒートポンプの使用は、多くの先進国市場で著しく増加するだろう。ヒートポンプは、熱を発生させるための燃料を、再生可能エネルギーによる電気に置き換える。産業界では、熱と発電を組み合わせたプロセス熱を生成するためのバイオエネルギーも成長する。
・早期の対応が不可欠
 再エネ化事例では、2020年までにすべての新建物では化石燃料を使用しないと想定される。保管建物の残りの部分は、今日の既存の保管建物からのものになる。改築のための追加的な努力がなければ、2050年にこの既存保管建物の約60%が化石燃料に依然として依存し続けるであろう。

○輸送
 再エネ化事例分析では、運輸部門は、参照事例と比較して、2050年の総排出削減量の約20%を占めるであろう。乗用車が最も多く寄与し、次いで貨物輸送となる。
・バイオ燃料が鍵となる
 今日、全部門の中で最も再生可能エネルギーシェアの低い輸送では、再生可能エネルギー総使用量における液体バイオ燃料とバイオメタンのシェアは、2015年には4%から2030年には12%に、2050年には26%に増加するだろう。絶対的に言えば、これは2015年の1,210億リットルから、2030年には年間約5,000億リットルへと、4倍の伸びを示す。2030年以降その量は倍増し、2050年までに年間12,000億リットルになる。この総量のほぼ半分は、2050年には、現在はバイオ燃料のわずか1%しか供給していない高度液体バイオ燃料に由来し、従来のバイオ燃料よりも幅広い種類の原料から作られるであろう。
・長距離輸送用途では課題が残る
 長距離貨物輸送、航空輸送、船舶輸送には難題が残っている。これらの用途は、世界の輸送部門の総エネルギー需要の約半分を占めている。電化の可能性は限られている。
 バイオ燃料は、現在、これらの輸送モードの主な解決策である。航空部門が従来の石油由来灯油から高度なバイオ燃料に切り替えると、その燃料の総生産量の約40%を消費することになる。しかし一般的には、輸送用バイオエネルギーについては、その原料を栽培することは食料生産のために作物を栽培する土地を奪うかもしれないので、慎重なアプローチを必要とする。
 水素または革新的な蓄電法は、バイオ燃料の必要性を低減する可能性がある。

○エネルギー効率改善による削減
 追加の排出削減は、建物で使用される機器のエネルギー効率改善や、より効率的な産業用モーターの使用、より良い産業用エネルギー管理システムの導入など、需要側の措置からもたらされる。これらの削減量は、各最終用途部門の分析に含まれている。また、発電においてでも説明されていれば、その部門は2050年に必要なCO2排出削減量の3分の1を占めるだろう。

2)新技術の適用
○CCS
 CCSは業界の再エネ化事例に基づいた主要技術である。 しかし、その見通しは不確実であり、実現の可能性が位置、地質、水資源およびその他の要因に依存する。再エネ化事例では、基準事例と比較して、産業からの排出量が2050年には90%減少して0.6Gtになる。この削減量の3分の1はCCSで達成され、25%は再生可能エネルギー(大部分はバイオマス)に由来し、40%はエネルギーおよび材料効率措置に由来する。
・電力貯蔵
 電力貯蔵は、多様な再生可能エネルギーの、より高いシェアを統合するための別の重要な選択肢である。
ⅰ)蓄電:再エネ化事例分析では、設置された太陽光および風力の合計容量が5,000GWになる2030年までに、蓄電容量が1,000GWを超える。この貯蔵容量は、電気自動車から600GW、揚水力から325GW、定置バッテリー貯蔵庫から125GW、中古車バッテリーから50GWにと分割される。
ⅱ)EVによる蓄電:総貯蔵容量は2050年までに3,000GW近くに増加し、稼働中のEVはこの合計の大部分を占める。
ⅲ)天然ガスによるバックアップ:再エネ化事例は、天然ガスによるバックアップ容量も重視している。そのような目的のために設置された総ガス容量は、2050年までに5,000GWに達するだろう。

4,再生可能エネルギーへの期待   = まとめ =
 再エネ化事例では、伝統的なバイオエネルギーの使用はほぼゼロになるため、2030年の再生可能エネルギー使用量145EJ(および2050年の同235EJ)は、ほぼ完全に現代の再生可能エネルギー技術から得られるであろう。総合的には、再エネ化事例では、現代の再生可能エネルギーの使用量は、2050年までに現在の7倍になる。輸送、暖房、冷房のための再生可能エネルギーの直接使用については、最終再生可能エネルギーの総使用量の、今日の80%と比較して2030年には66%と減るのは、2030年の方がはるかに効率的なことと、再生可能な電気量のシェア増に依るためである。最終使用分野における可能性は、2050年にも同様に高いままである。伝統的なバイオエネルギー利用の大幅な減少にもかかわらず、最終的な再生可能エネルギー総使用量における最終用途部門の割合は高い。

図4:再エネ化事例における、2030年および2050年の部門別および技術による最終的な再生可能エネルギー利用

[注目点]再エネ化事例においては、最終再生可能エネルギーの使用量は、2050年において現在の4倍になる。電力と熱は、全再生可能エネルギーの約40%と44%をそれぞれ消費し、輸送は約16%を消費する。
                                           == 以上 ==

エネルギー転換への視点:低炭素エネルギーシステムへの投資ニーズ

[副題]脱炭素化への世界的取り組みを提言

[ 出典 ]
http://www.irena.org/menu/index.aspx?mnu=Subcat&PriMenuID=36&CatID=141&SubcatID=3828

この共同研究では、G20諸国および世界のエネルギー部門における脱炭素化の可能性について検討している。第3章「世界的なエネルギー転換の展望と再生可能エネルギーの役割」は、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の調査結果を強調している。

詳細は報告書または要約書*を参考のこと。
* http://www.irena.org/DocumentDownloads/Publications/
Perspectives_for_the_Energy_Transition_2017_Executive_Summary.pdf

[時期は2017年・G20開催前]

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要約書

著者:国際エネルギー機関(IEA)および国際再生可能エネルギー機関(IRENA)

研究の範囲

ドイツ政府は、IEAとIRENAに、パリ条約に定められているように世界の温度上昇を2℃以下に十分抑えることと一致する、エネルギー部門転換に不可欠な要素を明らかにするよう求めている。
この調査の最も重要な目的は、費用効果の高い方法により、そのような転換を促進するために必要な、発電、輸送、建物および産業(加熱および冷却を含む)における低炭素技術への投資規模および範囲を分析することで、併行して他の政策目標にも取り組んでいる。
この報告書の調査結果は、2017年ドイツG20大統領府におけるエネルギーと気候に関するG20の作業に通知される。

今世紀半ばまでの世界について、エネルギー関連の温室効果ガス排出量を大幅に削減するための道を拓くエネルギー部門への投資ニーズを、IEAとIRENAは別々に調査した。両機関は、パリの2℃以下の目標に寄与する方法として、2100年までに地球平均気温の上昇を2℃に66%の確率で抑制することに適合する、1つの中核シナリオを策定した。
IEAとIRENAの分析は共に、エネルギー部門について同じ炭素予算から始める。しかしながら二つの分析には、目標到達への道筋が異なる:IEAが実施したモデリング分析では、技術的に中立的なエネルギー部門の脱炭素化への道筋をつくることを目標としており、各国の特定の状況を考慮して、すべての低炭素技術が含まれている。IRENAが実施した分析では、他の低炭素技術を考慮しながら、エネルギー効率と再生可能エネルギーの潜在的可能性を気候目標達成に向けて強調するエネルギー転換を描いている。

IEAとIRENAは異なるアプローチでエネルギー部門の分析を行い、異なるモデルやツールを使用しているが、グローバルエネルギー部門の適時な移行のための経路と枠組みの関連性を支持する、高レベルの成果には類似点がある。

炭素収支

全地球表面温度の平均上昇は、二酸化炭素(CO2)の累積排出とほぼ線形の関係にある。この有用な関係は、選択された温度目標を下回る可能性と関連し得る、残りの全体的な「CO2収支」(所定の時間枠にわたって放出されるCO2の累積量)、という概念をもたらした。

パリ合意では、気温上昇を「十分2℃以下」に保ち、気温上昇を1.5℃に制限しようと努力している。しかし、実際には「十分2℃以下」とは何か、あるいは温度目標にどのような確率を付けるべきかについての明確な指針はない。このレポートの目的のために、一時的な枠超えを起こすことなく、21世紀全体の平均気温上昇を2℃以下に保つ確率が66%のシナリオに焦点を当てることにした。
この定義と一致する関連CO2収支を理解することは、エネルギー部門の移行のペースと範囲をモデル化する上で重要な考慮事項である(表ES.1)。2℃以下に留まる可能性が66%のCO2収支の見積もりを作成するには、非CO2排出量のレベルと料金を見積もる必要がある。この研究の目的上、非エネルギー部門に由来する非CO2排出は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書のデータベースからのシナリオに依存している。
本研究の目的上これらの仮定を用いて、2015年から2100年までのCO2収支は、880Gt(ギガトン)と推定される。これは、CO2収支を検討した研究のうち、590~1,240 Gt CO2の範囲の中央に位置し、2%以下に留まる可能性は66%である。

[ 表1: 本研究でIEAとIRENAによって開発された脱炭素化シナリオにおけるエネルギー部門  CO2収支]
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(Gt CO2)              2015 – 2100
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全CO2                 880
産業プロセス             -90
陸上利用、陸上利用変化、林業   0
エネルギー部門CO2収支      790

このレポートで調査された66%2℃シナリオは、2100年だけでなく21世紀の間にも2℃以下の温度上昇を維持することを認識することが重要だ。この温度の一時的な枠超えは、どの年においても許されない。この作業前提の主な理由は、2100年にこのレベルに落ちる前に特定の温度上昇が一時的に枠超えするのを許すことは、将来のいつかの時点である規模で(炭素捕獲と貯蔵を伴う、直接的な空気の捕獲、強化された風化、植林、炭、バイオエネルギーなどの)脱CO2技術に頼ることを示唆する。土地利用の要求のための炭素捕獲と貯蔵(BECCS)によるバイオエネルギーの普及の影響評価、またはCO2を除去するための非エネルギー技術の潜在的可能性の評価は、この報告の範囲外である。

それにもかかわらず、IPCCが第5次評価報告書で評価したシナリオの多くは、2100年の特定の気温上昇を2℃に制限することを目標としており、地球規模のエネルギー部門全体が、世紀末までに大気からのCO2排出を吸収していると言うようなBECCSに大きく依存している。彼らは負の排出技術がある規模で利用可能になるまで、CO2排出削減を遅らせる可能性はないので、したがって本研究で開発されたシナリオは、2℃の目標を達成するために必要なエネルギー排出削減のタイミングと範囲に関して野心的であることになる。それにもかかわらず、シナリオは負の排出技術が利用可能になると、より厳しい気候目標を将来達成する可能性を提供する。

66%2℃シナリオのエネルギー部門のみのCO2収支に達するためには、エネルギー部門における化石燃料の燃焼に関係しないCO2排出量を、総CO2収支から差し引く必要がある。これらの排出は主に、工業プロセスおよび土地利用、土地利用変化と林業(LULUCF)の2つの要因から生じる。後者については、この研究で使用されたLULUCFからのCO2排出量の見通しは、IPCCによって分析された36の独自の脱炭素化シナリオの中央値に基づいている。この研究では、LULUCFからのCO2排出量は、2015年の3.3 Gtから世紀半ばまでに0に落ちると仮定している。
その後、LULUCFは21世紀の残りの期間にわたってCO2の純吸収体となり、その結果、2015年から2100年までのLULUCFからの累積CO2排出量はゼロに近づく。

これら2つの要因の正味の効果は、総CO2収支の880Gtから790Gtのエネルギー部門のみの収支に減らすことである。その挑戦は厳しいものとなる。比較すると、現在の国家決定拠出(NDC)は、2050年までエネルギー部門がほぼ1,260Gt、すなわち許容収支よりも約60%多い排出量を出すことを意味する。

IEAの知見

66%の確率で地球平均気温上昇を2℃以下に制限するには、例外的な範囲、深さおよび速度のエネルギー移行が必要となる。 エネルギー関連のCO排出量は、2020年までにピークに達し、2050年までに今日のレベルから70%以上低下する必要がある。一次エネルギー需要の化石燃料のシェアは2014年から2050年にかけて半減するが、再生可能エネルギーやCCS(炭素回収・貯留)と共に原子力や化石燃料を含む低炭素資源のシェアは世界で3倍以上になり、2050年のエネルギー需要の70%を占める。

66%2℃シナリオでは、すべての国の低炭素技術のすべてを総動員することが要求される。化石燃料補助金の急速な廃止、前例のないレベルへのCO2価格の上昇、広範囲のエネルギー市場改革、そして低炭素とエネルギー効率の厳格な要求といった野心的な政策尺度が、この移行を達成するために必要となるだろう。このような政策は、66%の2℃シナリオを達成するために、すべての国で直ちに包括的に導入する必要があり、CO2価格はトン当たり190米ドルに達する。このシナリオでは、低炭素技術の開発と展開を促進するため、技術の協力に対する世界的な取り組みがより広範かつ深く求められている。

エネルギーおよび材料効率の改善、そして再生可能エネルギーのより高い展開は、世界的な低炭素移行の不可欠な要素である。 66%2℃シナリオでは、世界経済のエネルギー強度を2014年から2050年の平均で2.5%低下させるための、積極的で効率的措置(過去15年間に見られた改善の速度の3.5倍よりも大きい)が必要となるだろう;風力と太陽光を合わせたものが2030年までに最大の電力源となるだろう。これには、柔軟性を確保するためのルールと技術とともに、様々な再生可能エネルギーの大部分を統合するために電力市場を再設計するための大きな努力が伴う必要がある。

[ 図1、新しい政策シナリオと、66%2℃シナリオにおける技術と地域による世界的な排出削減対比 ]

<注:新しい政策シナリオは、パリ協定のNDCのエネルギー部門への影響を反映している。>

<<注目点:G20諸国は、66%2℃と新政策のシナリオの間で、2050年における排出量のほぼ4分の3を 削減することを準備していた。>>

66%2℃シナリオを達成するためには、エネルギーを生産して使用する方法の深い転換が必要である。 2050年までに、電気の約95%が低炭素由来で、新車の70%が電気稼働で、既存の建物ストック全体が改装され、産業部門のCO2強度は今日より80%低くなる。

66%2℃シナリオを達成するためには、エネルギー供給投資の基本的な再調整と低炭素需要側の投資の急速な拡大が必要であろう。 2015年の1兆8000億ドルに対し、2016年から2050年にかけて、毎年約3.5兆ドルのエネルギー部門投資が必要となるだろう。化石燃料の投資は減少するが、2015年から2050年の間に再生可能エネルギー供給投資が150%増加することによって大きく相殺されるだろう。低炭素技術への需要側の投資の総額は、同じ期間に10倍の割合で急増する必要がある。現在の気候に関する約束から生じる傾向と比較して、付加的な純投資額は、2050年の世界のGDPの0.3%に相当する。

[ 図2、66%2℃シナリオにおける年間平均世界のエネルギー需給サイド投資 ]

< 注:T&D = 伝送と配分; EVs = 電気自動車; CCS = 炭素捕集貯蔵 >

<< 注目点:供給側投資の水準は依然として一定だが、化石燃料からシフトしている。効率と 低炭素技術への需要サイド投資は、2040年にはほぼ3兆ドルにまで上昇する。>>

化石燃料は、66%2℃シナリオでもエネルギーシステムの重要な部分ではあるが、様々な 燃料の料金は異なる。 石炭の使用は最も急速に減少するだろう。石油消費も減少するだろうが、その代替はいくつかの分野で仕掛けられる。現在の生産場所の減少が需要の減少よりも大きいため、新たな石油供給への投資が必要となるだろう。天然ガスは、いくつかの部門にわたる移行において重要な役割を果たす。

エネルギーの移行を促進するためには、早期、協調的かつ一貫した政策行動が不可欠 である。 エネルギー市場は、あらゆる種類の技術のリスクを負っており、一部の資本は回収できない(「無支援資産」); 気候政策はさらなる検討を加えることになる。66%2℃
シナリオでは、電力部門において、気候政策による追加のリスクの大半は石炭火力発電所
にある。ガス火力発電所は、長年に渡って柔軟性の重要な提供者であり、また、石炭火力
発電所よりも資本集約性が低いので、より影響を受け難い。化石燃料上流部門は、電力
部門に加えて、投資を回収しないリスクも伴う可能性がある。同じ炭素収支を維持しながら
10年間の移行を遅らせることは、完全に回収されないリスクの3倍以上になる。
CCSの導入は、化石燃料資産が投資を回収し、低炭素移行時に無支援だった資産を、最小限に抑えるのを助ける重要な方法を提供する。

よく設計された政策では、大気汚染の大幅な改善と化石燃料の輸入法案や家計のエネルギー 支出の削減は、66%2℃シナリオで達成された脱炭素化を補完する。 すべての人にエネルギーへの普遍的なアクセスを達成することが重要な政策目標である。その成果は気候目標に達することを危険にさらすことはない。気候目標を追求することは、エネルギーアクセスを増やすための公益をもたらすことができるが、気候政策だけでは普遍的なアクセスを達成することはできない。

[ 図3、66%2℃シナリオにおける選択された主要指標の動向 ]

<< 注目点:低炭素エネルギー部門への移行は、大気汚染や家計の燃料費の削減など、他の 重要なエネルギー政策目標を達成するのに役立つ可能性がある。>>

 IRENAの知見

再生可能エネルギーとエネルギー効率対策の迅速な導入は、エネルギー転換の重要な 要素である。 2050年までに、再生可能エネルギーとエネルギー効率は大部分の排出
削減ニーズ(90%)を達成し、化石燃料の切り替えとCCSによって約10%が達成される。
REmap脱炭素化のケースでは、原子力は2016年の水準に留まり、CCSは専ら産業部門に
配備されている。

再生可能エネルギーのシェアは、2015年の一次エネルギー供給の約15%から、2050年には65%に増加する必要がある。エネルギー強度の改善は、2030年までに年間約2.5%に倍増し、2050年までこの水準で継続しなければならない。 2050年のエネルギー需要は、エネルギー強度の大幅な改善のために今日の水準を維持するだろう。この改善の約半分は費用対効果の高い再生可能力に基づく、暖房、冷房、輸送、電化によるもので、再生可能エネルギーに起因する可能性がある。

 2050年のエネルギー供給ミックスは大幅に異なるだろう。 2050年の全化石燃料使用
量は、今日のレベルの3分の1になるだろう。石炭の使用は最も減少して、石油需要は今日の水準の45%になるだろう。生産コストの高い資源は、もはや利用されないだろう。
天然ガスは、再生可能エネルギーの大量利用の「橋渡し」となることがあるが、高レベルの
CCSと結合しない限り、その役割は限定されるべきだ。長期的な排出削減目標を念頭に置かずに天然ガスの展開が大幅に拡大すると、経路の依存と将来無支援資産のリスクがある。

 エネルギー移行は手軽にできるが、低炭素技術への追加投資が必要になる。 再生
可能エネルギーと有効化技術の範囲全体でさらに大幅なコスト削減を図ることは、投資
増加への主たる駆動力となろう、しかし累積的な追加投資は、2050年までの期間に29兆ドルに達する必要があろう。これは、参照事例で既に想定されている116兆ドルの
投資に加えて行われる。人間の健康への影響を軽減し、気候変動を緩和することは、
脱炭素化のコストよりも2倍から6倍の節約になる。

[ 図4、世界全体の一次エネルギー供給量、2015-2050 ]

<< 注目点:再生可能エネルギーは、2050年にREmapのもとで最大のエネルギー供給源であり、 エネルギーミクスの3分の2を占める。これには、年間で約1.2%の再生可能エネルギーシェアの 増加が必要で、これは近年に比べて7倍の加速となる。>>

惑星の温度上昇を2℃に制限し、このエネルギー移行の利点を最大限に引き出し、無支援 資産のリスクを減らすには、早期の行動が不可欠だ。 地球温暖化を1.5℃に制限する選択肢を実現可能に維持するには、早期に行動を起こすことも重要である。エネルギー部門の脱炭素化を遅らせることは、投資を増加させ、二重の無支援資産とすることになる。さらに、活動を遅らせると、大気から炭素を除去するために高価な技術を使用しなければならなくなる。

[ 図5、参照事例2015-2050と比較してREmapでの追加投資ニーズ ]

<< 注目点:2°Cの目標を達成するには、基準ケースと比較して、2015年から2050年の間に 追加で29兆ドルを投資する必要がある。>>

エネルギー転換は経済成長を促進し、新しい雇用機会を創出する可能性がある。世界のGDPは2050年に約0.8%増(1.6兆米ドル)となろう。今から2050年までのGDPの増加による累積利益は19兆米ドルに達するだろう。増加した経済成長は、投資刺激と成長促進政策の強化、特に炭素価格の使用と所得税の低減への収益のリサイクルによって促進される。最悪のシナリオ(資本の完全押し出し効果)では、成長促進政策の効果が依然として良好であるため、GDPの影響は小さくなるが、それでもプラス(0.6%)である。
重要な構造改革が行われる。化石燃料産業は部門別生産量の最大の減少をもたらすが、資本財、サービス、バイオエネルギーに関連するものは最も高い増加を経験する。エネルギー部門(エネルギー効率を含む)は、2050年に約600万人の追加雇用を創出する。化石燃料産業の雇用損失は、再生可能エネルギーの新しい雇用によって完全に相殺され、エネルギー効率化活動により多くの雇用が創出されるであろう。GDPの全体的な改善は、他の経済部門での雇用創出を促すだろう。

[ 図6、世界のGDPは資本の押し出し効果の様々なケースに影響する ]

< 注: 部分的な押し出し効果は、貯蓄を投資の少なくとも50%にすることによってモデル化
される。完全な押し出し効果は、投資と同等の節約を課す。
押し出し効果無しは、貯蓄と投資の間にいかなる関係も課していない。>

<< 注目点:世界のGDPは2050年に約0.8%(1.6兆米ドル)増加する見込みである。最悪の シナリオ(資本の完全な押し出し効果)では、成長促進政策の効果が依然として良好で あるため、GDPの影響は小さいが、依然としてプラス(0.6%)である。>>

経済的、社会的、環境的側面を含む人間の福祉の向上は、GDPによって捉えられたものをはるかに上回る恩恵をもたらすだろう。特定された脱炭素化オプションの約20%が、福祉の利点を考慮しないで経済的に可能である。残りの80%は、気候の影響の軽減、公衆衛生の改善、快適性と性能の向上などの利点が考慮される場合、経済的に可能である。しかし、今日の市場は歪んでいる。化石燃料はまだ多くの国で助成されており、化石燃料を燃やす真のコストは、炭素価格がない場合には考慮されていない。これらの便益を解消するには、民間部門には適切な動機を提供する、明確かつ信頼できる長期的な政策枠組みが必要である。

電力部門の厳しい排出削減は重要な機会であり、優先順位として実施すべきである。最終的な 部門での化石燃料使用量削減の主な課題に取り組むため、部門別アプローチはシステム全体を視野に広げなければならない。電力部門は現在、必要な排出削減を達成するべく進んでおり、電力システムの統合と最終用途部門との連携を重視するなど、継続的な努力が維持されなければならない。輸送では、電気自動車の台数が増加し、貨物や航空用に新しい手段を開発する必要がある。建物では新しいものが最高の効率基準であり、既存の建物が急速に改装されることが重要である。建物や都市の設計は、再生可能エネルギーの統合を促進すべきである。

革新への投資の増加は、複数の部門や工程に必要な新しい手段を開発するための十分な 時間を確保するべく今開始する必要があり、その多くは投資サイクルが長い。技術革新の努力は、新しい市場デザイン、新しい政策、新しい資金調達やビジネスモデルそして技術移転によって補完される必要がある。

[ 図7、REmap、2050年における部門と技術による最終的な再生可能エネルギーの利用 ]

<< 注目点:REmapのもとでは、2050年の最終再生可能エネルギーの使用量は現在の4倍になる。 電力と熱は、再生可能エネルギー総量の約40%と44%をそれぞれ消費する。>>

 提言

1.パリ条約の「2℃をかなり下回る」目的に沿ったエネルギーシステムの転換は技術的には可能であるが、重要な政策改革、積極的な炭素価格設定、追加の技術革新が必要となる。2050年の世界のエネルギー供給ミックスの約70%は低炭素である必要がある。2050年までの排出削減ポテンシャルの最大のシェアは、再生可能エネルギーとエネルギー効率にあるが、すべての低炭素技術(原子力と炭素捕捉と貯蔵[CCS]を含む)が役立つ。

2.エネルギー転換には、相当量の追加の政策介入が必要となる。
・再生可能エネルギーは発電において支配的役割を果たすことになる。様々な再生可能
エネルギーを非常に高いレベルで巧みに統合することは、コスト効率の高いエネルギー
部門への移行の重要な柱になる。
・電力市場の改革は、様々な再生可能エネルギーのシェア拡大の柔軟性のニーズに対応できるようにするために不可欠である。
・現在恵まれない人々のために最新のエネルギーサービスへのアクセスを確保することは、クリーンエネルギー技術の導入による大気の質向上と並んで最優先事項である。

3. 気候目標を達成するためには、エネルギー供給への総投資額は今日の水準を上回る必要はなく、最終用途分野では相当な追加投資が必要となる。
・エネルギー供給における投資ニーズは、今日のエネルギー部門が実施する投資レベルを上回るものではない。「十分2℃以下」の目的に相当する低炭素技術への投資は市場の基準になるということを確実にするためには、適切かつ意義ある政策シグナルが必要である。
・より効率的な家電製品、建物の改装、再生可能エネルギーおよび電化(電気自動車とヒートポンプを含む)のための産業および家庭における付加的な投資需要は重要である。エネルギー消費者がより効率的な技術の使用によってもたらされる、より低いエネルギー支出の潜在的利益を享受するためには、より高い先行投資ニーズが確実に動かされるようにする政策が必要であろう。

4. 2050年まで化石燃料はまだ必要である。
・化石燃料の種類の中で、石炭の使用は気候目標を満たすために最も減少するだろう。
・天然ガスは、電力部門におけるシステムの柔軟性を確保し、暖房目的および輸送における、より高い炭素排出量を有する燃料を代替するために、エネルギー移行において重要な役割を果たすであろう。
・石油の使用は、炭素集約度の低い供給源に取って代わられ減少するであろうが、その代替は石油化学品のようないくつかの分野では困難である。
・CCSは、IRENA分析では業界部門のみであるが、IEA分析では電力部門と産業部門において重要な役割を果たしている。

5.劇的なエネルギー部門の移行には、安定した長期的な価格シグナルが経済的に効率的であること、低炭素技術が適時採用可能なこと、そして無支援のエネルギー資産の量を最小限に抑えることが必要となろう。遅れた行動は、無支援資産と投資需要を大幅に増加させるであろう。

6.再生可能エネルギーとエネルギー効率は、世界の低炭素転換を成功させるためにはすべての国にとって不可欠だが、エネルギー部門の可能性、政策や技術の優先順位など、各国の状況に応じて他の低炭素技術によって補完する必要がある。

7. エネルギー部門の移行は、電力部門と最終用途部門の両方に及ぶ必要がある。
・電気自動車は乗客と貨物輸送の支配的なシェアを占めるだろう。
・再生可能エネルギーの配備は、電力部門を超えて熱供給と輸送に移行する必要がある。
・手頃な価格、信頼性の高い持続可能なバイオエネルギー供給は、とりわけ最終用途部門における限られた代替選択肢に照らして優先事項となる。

8.技術革新は、持続可能なエネルギー部門への長期的な移行の中核にある。
・技術革新の短期間での研究、開発、デモンストレーションおよび展開(RDD&D)の支出は
重要な技術の可用性を確保し、コストをさらに下げるのに役立つ。
・既存の技術だけでは、必要な排出削減量のすべてを達成することはできない。電気トラックや蓄電池などの市場で、意義在るだけの規模でまだ利用可能ではない追加の低炭素技術が、既存の選択肢を補完するために求められる。
・技術革新は、支持的な政策や調整設計、新しいビジネスモデル、手頃な資金で補完され
なければならない。

9.非効率な化石燃料補助金や炭素価格の段階的廃止による価格シグナルの強化は、平等な場を提供するのに役立つが、2℃の目標を十分に下回る他の措置によって補完する必要がある。
・価格シグナルは、エネルギー部門が気候の配慮を投資決定に考慮するために重要である。
・最貧層の人々のエネルギー需要が考慮され、適切に配慮されることを確保することが重要である。

10.ここで提示されたIEAとIRENAの分析は、エネルギー部門の移行が、大気汚染の減少、輸入国の化石燃料費の削減、家計のエネルギー消費の削減など、重要な共益をもたらす可能性があることを見出した。両者の分析はまた、全体的なエネルギー投資の必要性は大きいものの、低炭素エネルギー部門への移行に伴う漸進的なニーズは、世界の国内総生産(GDP)のわずかなシェアになることを示している。IEAによると、移行に伴う追加の投資ニーズは、2050年には世界のGDPの0.3%を超えないとする。1) IRENAによると、必要な追加投資は、2050年には世界のGDPの0.4%になり、雇用と経済成長に正の影響を与えるとする。
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1) OECDによる、IEAシナリオが広範なマクロ経済政策の中でどのように機能するかについての分析は、”今後の気候への投資、成長への投資”というタイトルで発表される予定である。

石炭とガスによる電力は依然安いが、持続可能エネルギーによる電力がコスト競争力で優る

– Bloomberg New Energy Finance(BNEF):
Bloomberg press release Jun 12, 2016

Coal and gas to stay cheap, but renewables still win race on costs

 今年のBNEF報告書によると、世界の今後25年にわたる発電容量への投資は、電気自動車による爆発的な2040年における電気需要8%押し上げもあって、11.4兆ドルと予測している。
London and New York, 13 June 2016 –
 石炭とガスの低価格が継続する可能性はあるが、蓄電池などの安定オプションを有した風力や太陽光などの持続可能エネルギー源に向かうという、今後数十年間にわたり世界の電力システムの根本的な転換を抑制することはできないであろう。

 BNEFからの最新長期予測『新エネルギー展望(NEO)2016』
http://about.bnef.com/newenergyoutlook によると、世界の石炭、ガス、石油価格が前年に比べて大幅に低い傾向を示している。しかし重要なことは、風力や太陽光のコストもまた急激な低下を示していることだ。

 予測は、2016ー40年の期間にわたるCO2排出量についての複合したニュースを有している。すなわち中国の弱いGDP成長と経済のリバランスは、排出量が早ければ2025年にピークになることを意味するであろう。しかし、インドや他のアジア新興市場で盛んになりつつある石炭火力発電は、2040年における世界の排出量は依然として2015年水準の5%に相当する約700メガトンとなることを示している。

Seb Henbest,ヨーロッパ・中東・アフリカBNEF所長・New Energy Outlook(NEO) 2016 執筆リーダ談:「$7.8兆程度が、2016年と2040年の間に世界で持続可能エネルギーに投資され、その三分の二が全て発電容量への投資となる。しかしそれは国連が掲げる2℃気候目標と互換性のある経路に世界の排出量をもたらすには、何兆$もの投資を必要とすることを意味する。」

NEO 2016 から特記される事柄は次の10項目となる。

1,石炭とガスの価格は低く留まる
 BNEFは石炭とガス両方の商品に対する意図的供給過剰を反映して、それぞれ33%と30%価格の長期的な見通しを低く予測した。これは、石炭やガスを燃焼させて動力を発生するコストを削減することになる。

2,風力と太陽光コストは急激に下がる
 陸上風力によるメガワット時当たりの発電の平準化コストは2040年までに41%低下し、
太陽光発電は60%低下する。この2つの技術は、2020年代の間多くの国で、および2030年代の世界のほとんどの国で、電気を生産する最も安価な方法を供することになる。

3,化石燃料による発電には2.1兆$の投資が見込める
 石炭やガス発電への投資は、主に新興国では継続される。$1.2兆ほどは新しい石炭燃焼方式に向かい、新たなガス火力発電所へは$8920億となる。

4,しかし持続可能エネルギーはいいとこ取りとなる
 $7.8兆ほどはグリーンパワーに投資され、そこでは陸上と洋上風力に$3.1兆、実用規模の屋上および小規模のほかの太陽光に$3.4兆、そして水力発電に$9110億が当てられる。

5,2℃シナリオには相当な費用負担が求められる
 グリーンパワー投資の7.8兆ドルの上に、IPCCの言う2040年までに気温上昇を防ぐ限界値
450ppmを達成するべく、世界は大気中のCO2をゼロにするのに5.3兆$もの投資を更に行わねばならない。

6,電気自動車ブームは電気需要増を呼ぶ
 電気自動車は、2040年における世界の電気需要の8%に相当する2,701兆ワット時(TWh)増加させる。BNEFの予測を反映して、41百万車、あるいは2015年時点の90倍の車台数に相当する、その年の世界の新しい軽量自動車販売の35%を占めることを表す。

7,小規模の蓄電池市場は2500億$に
 電気自動車の増加は、住宅用および商業用太陽光発電システムと共に併用されるリチウムイオン電池のコストを引き下げる。我々は、エネルギー貯蔵の背後にある電力を総計すると、今日の約400メガワット時から2040年で約760ギガワット時に、劇的に上昇すると予想している。

8,中国の石炭火力発電は、これまでの見通しより弱含みの傾向となろう
 中国経済の変化および持続可能エネルギーへの指向は、石炭火力発電は10年で、昨年のNEO版においてBNEFが予測した発電量の21%以下に相当する1,000兆ワット時になることを意味する。

9,世界のCO2排出量傾向はインドが焦点となる
 電力需要は、2016年から2040年の間に3.8倍になると予想されている。次の24年間で
持続可能エネルギーに$6110億を投資し、原子力に$1150億投資しても、需要の増加を満たすには石炭発電所に大きく依存していくことになる。これは、2040年まで年間電力部門の
排出量の3倍になることを予想させる。

10,ヨーロッパでは持続可能エネルギーが支配的になるが、米国では持続可能エネルギーがガスを凌ぐ
 風力、太陽光、水力そして他の持続可能エネルギー設備は、ヨーロッパでは2015年の32%から2040年には70%の電力を生み出す。米国ではガスのシェアが2015年の33%から、2040年には31%と低減するのに対し、持続可能エネルギーのシェアは14%から44%に増加する。

 なお発表に当たり、責任者から次のコメントがあった。
・Jon Moore(BNEF CE)は2015年版のより、石炭とガス価格を著しく低い推移としているが、一方では次の25年間に、クリーンな電力に向けた迅速な推移を依然示していることは衝撃的である。」
・Elena Giannakopoulou(NEO 2016プロジェクト:エネルギー経済主任)
 「驚かせるかもしれない一つの結論は、私達の予測は、北米を除いて、ガスの黄金時代を示さないことだ。グローバルな電力発生源としては、ガスは2027年に持続可能エネルギーに追い越され、2037年には石炭が持続可能エネルギーに取って代わられる。」

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[図]2016-40年間の主たる発電技術による電力量推移:単位は千TWh
情報元: Bloomberg New Energy Finance NEO 2016
* 図は本稿トップに記載したレリースサイトに掲載されている。
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「パリ気候変動協定の目標を達成する鍵は都市にある」と最新のIEA報告書が示唆

出典:IEA Press Releases, 1 June 2016

http://www.iea.org/newsroomandevents/pressreleases/2016/june/etp2016-cities-are
-in-the-frontline-for-cutting-carbon-emissions.html
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 『エネルギー技術展望2016年』は、都市の建物や輸送が排出するCO2を除去することは、パリ気候変動協定の目標に到達するための鍵であることを示しているが、遅々として進まないのは政府のコミットメントをテストしていることになる。
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 都市部が、費用対効果の高いグローバルなCO2排出量を3分の2まで削減する可能性を有していると強調した上で、都市は低CO2エネルギーセクターへの移行について先導的役割を果たす必要があると、国際エネルギー機関(IEA)が今日言及した。

 年次報告書『エネルギー技術展望2016』*(ETP2016)において、IEAは2015年12月パリの気候変動会議(COP21)で設定した目標に沿って、地球の気温上昇が2℃を超えないように制限する可能性がある長期的な技術経路を提供している。最も費用対効果の高いアプローチは、特に新興国や発展途上国における都市での低CO2オプションを展開することであるとする。

 「今日の都市は世界人口の約半分の人々にとってホームであるが、ほぼ世界的なエネルギー需要の3分の2とエネルギー部門からのCO2排出量の70%を担うので、COP21の約束を達成しようとする場合、彼らは主導的な役割を果たさなければならない」とIEAエグゼクティブディレクター Fatih Birol が、サンフランシスコのクリーンエネルギー閣僚会議でのレポート発表で語った。**
そして「都市は経済成長と革新の中心であるから、かれらは新しい技術のための理想的な
試験台 – より持続可能な交通システムからスマートグリッドへの – であって、
低CO2エネルギーセクターへの移行を先導する助けとなる。」

 そして、グローバルな利害関係者を連携させるにはアクションが必要である。2050年までの世界的な最終エネルギー需要の伸びの、少なくとも3分の2が新興国や発展途上国の都市から由来すると期待される。今から2050年の間に、新しい建物の大部分 – 世界の現在の建物ストックの40%に相当 – が新興国や発展途上国の都市に建設され、そしてグローバル都市旅客の増加の85%を占めるようになる。現在の政策の変更を行わないと、エネルギーサービスのためにその需要の増加は、これらの都市のエネルギー関連のCO2排出量を倍増する。しかし、これらの新興国における都市部の多くは、まだ完全に構築されていない。
 市民に同じレベルの快適さを有する近代的なエネルギーサービスへのアクセスを供しながら、いかに先進国の多くの都市の典型的なCO2集約型のインフラを回避するか、ETP2016はその方法を示している。従って国際協力は、世界中の都市がそれぞれの経験を引き立てることができることを確実にするために重要であり続ける。

 例えば、都市部の建物は彼らが消費する電力を自家発電する便利なスペースを提供する:2050年までに、屋上の太陽光発電設備は、技術的に都市の電力需要の3分の1を満たすことができる。そして、それらの建物はエネルギー効率の高い窓や家電製品などの最も効率的な技術を引き出す重要な需要の可能性を秘めている。ETP2016はまた、都市における現在の開発動向と比較して20兆米ドル投資ニーズを削減しながら、最高の電気自動車や公共交通機関が低CO2交通システムに至ることができる方法を詳しく説明する。

 ETP2016はCOP21の目標が達成可能であることを示しているが、そのクリーンエネルギーの進捗状況分析によると、全世界のクリーンエネルギー技術を導入する進歩が、まだ困ったことに必要とされる程度に到底達していないことが明らかになった。
 IEAの分析は、いくつかの技術に前向きな動きがなされていることが明らかになった:総再生可能エネルギーの現在導入されている容量は、太陽光発電と陸上での風力発電進歩に支えられ、過去最高の再生可能エネルギー容量の成長を遂げて2015年に150ギガワットを超え、世界的な発電の約23%を提供するに至っている。これは、2050年における再生可能エネルギーによる発電の3分の2を超えるという2℃目標に沿った心強い傾向となる。
 中国は最大の再生可能エネルギー市場であり、2015年の世界の新しい陸上風力発電量と太陽光発電容量の3分の1を占めている。 
 米国は、この一年間の容量の追加で40%の成長率を維持し、再生可能エネルギーのために世界第2位の市場としての地位を維持した。
 ETP2016は、中国と米国の寄与計が2℃の目標を満たすために目標に沿っていることが必要とされる故、2050年までの再生可能エネルギー容量の追加の3分の1が要求されると記している。

 並行して、たとえ2015年現在の世界の道路上の電気自動車が100万台を超えても、これでも相当画期的なことだが、2℃ゴールを達成するために2050年までに10億台を超える電気自動車を使いこなすという野心的な目的に比べると小さい。
 中国と米国は総売上高では市場のリーダーであったし、ノルウェーは販売されるほぼ4台に1台が電気自動車という点でマーケットシェアを世界的にリードしていた。だが、電気自動車の世界シェアは未だ小さくて、1%以上のマーケットシェアを有するのはわずか7カ国でしかない。

 レポートの調査結果を要約すると、Birol 博士は、「COP21は、気候変動に対するラジカルアクションの歴史的な転換点を示しており、かついくつかのクリーンエネルギー技術の最近の進歩は勇気づけられる成果である。しかし、全体的な進展はまだ遅すぎるし、低CO2移行の障害となっている低価格化石燃料を避けるべく加速しなければならない。今日のエネルギー市場の状況は、政府がなしたパリでの約束を、低CO2未来への確固たるアクションにどれだけ努力しなければならないかを示すリトマス試験となる。」と結論付けた。

* 『エネルギー技術展望2016』Energy Technology Perspectives 2016 報告書はIEA書店で販売している。
** 発表のスライドは下記サイトで閲覧しダウンロードもできる。(記事中の数字データに関連する図が掲載されている。)
http://www.iea.org/newsroomandevents/speeches/160601_ETP2016_CEM7.pdf

COP21において全加盟国参加の温暖化対策「パリ協定」を採択

 パリ郊外で開催していた国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)は2015年12月12日夜、京都議定書に代わる2020年以降の新たな地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」を採択した。
ここに条約締結の全196カ国・地域が削減に取り組む初めての枠組みが誕生した。
・協定は法的拘束力を持つ枠組みで、産業革命前からの世界の平均気温の上昇を2℃未満に抑える目標を明記した。
・更に、1.5℃に抑える努力をすることを併記し、海面上昇などで温暖化の影響を受けやすい島しょ国にも配慮した。
・増え続ける温室効果ガスを先進国主導でできるだけ早い時期に減少に転じさせ、今世紀後半には排出実質ゼロとする目標も盛り込まれた。
・各国が5年ごとに削減目標を国連に提出し、対策を進めることも義務付けられたが、目標達成の義務化は見送られた。
・途上国への資金援助については、2009年のCOP15で2020年までは年最大1千億ドルと決まっている支援額を、2025年までに上積みする方向で見直すことが盛り込まれた。
・ただし見直しについては、協定とは別の法的拘束力のない「COP決定」に記され、具体的な金額の明記に強く反発していた先進国に配慮した形となった。